binetu ジャンルは一応ミステリーに該当するようだが、読んだ感想はミステリーというより美容界でのサクセスストーリーという感じだ。
それにプラスして恋愛要素もあるが、女性同士の厄介な嫉妬や妬みが軸となっている。
エステサロンを舞台にした女性向けの長編。

 

主人公は和倉麻美。
脱サラ(OL)してエステティシャンになった。
大手エステティックサロンで働いていたが、或る日突然カリスマサロンとして名を馳せている個人経営のエステティックサロンのオーナー・京子からヘッドハントされる。
迷うことなく移籍し、自分の腕に自信を持っていく麻美。
移籍したサロン『ヴィーナスの手』は、手だけを用いるアロママッサージをメインとした施術を行う。
肉体的な疲労は重なるものの、心は充実し、毎日を楽しく過ごしていた。
同僚の嫉妬、オーナーからの期待など様々な負担があるものの、麻美はエステティシャンとして自信を持ちいきいきしはじめていた。
その昔、『ヴィーナスの手』には神の手(ゴッドハンド)と呼ばれる手を持っているエステティシャン・サリが居たことを知る。
不慮の事故で亡くなったサリの後釜としてオーナーが自分を引き抜いたと知り、複雑な思いを抱く麻美だったが、サリのことを知れば知る程サリを目標とし、追い抜きたいという野望が渦巻くようになる。
麻美を後押しするように新しい顧客や雑誌の取材などが続き、麻美の施術を受けるには2ヶ月待ちになる。
サリを追い抜きたいという一心で頑張る麻美の前に、オーナーの夫や息子が登場する。
サリが生前使用していたアンチエイジングのクリームを元に、新しい美容液を作るオーナーの息子。
そして、それに魅せられる麻美。
麻美はその美容液を使って施術をはじめる。
エステ業界も流れが速く、今のままでは『ヴィーナスの手』はダメになると思い美容液での施術をウリにしていこうと提案する麻美。
迷うオーナーを説き伏せて、麻美は走り出す。
そんな中、『ヴィーナスの手』を中傷するワイドショーの放送があり、サロンは急に傾きはじめる。
美容液についてのクレームも出始める。
サロンの復活を願い、麻美は動き始める。
そして、サリの死には理由があったのだと察する。
それでも麻美は施術を続け、一流のエステティシャンになろう、サロンを盛り上げようと邁進するのだった。


 

林真理子の『コスメティック』と似たところがある。
唯川恵に似ている雰囲気がある。
そんな女性向の小説だ。

年頃の女性が仕事をルーチンと感じはじめる。
自分がしたいことは何か考えはじめた時、突然スカウトされ新しい職場に異動し開花する。
そのプロセスは仕事に疑問を持っていたり、頑張っていたりするワーキングウーマンには楽しく感じることだろう。

自分が上に上がるとなれば、確実に下に落ちていく人間は居る。
足の引っ張り合い、落とし込みなど女性が喜ぶ刺激がふんだんに用意されている。
一気に読めるし、読み終わった後「こんな話は無いな」と思っても不快感は無い。
エンターテイメントとして読み終えられる面白い1冊。


<小学館 2005年>


永井 するみ
ビネツ―美熱