第26回すばる文学賞受賞作品。
新宿の街を背景に、自分の行き方や今のこの気持ちはなんなのかに悩み彷徨う孤独な少年の物語である。
なんでも希望どおりにするが、体に触れるのはご法度という男性客相手に風俗的なバイトをする17歳の高校生・怜司。
怜司の生活は歪み、偏っていた。
何の変哲も無い、父と母と自分という普通の家庭に育ちながら、怜司は少しずつ普通の高校生ではなくなっていく。
新宿で24時間営業の貸しロッカールームを見つけ、契約する。
スチールの感触に不思議な安心感を覚える怜司。
ある日、そこでただ床に座り続ける中年男・岸田を見かけ、引かれていく。
<B-24>のロッカーを契約している岸田。
ロッカールームのオーナーとも親しくなった怜司は或る日店番を頼まれ顧客情報を盗み見ることに成功し、岸田の個人情報を得る。
岸田が経営する倉庫を見つけ出し、バイトを始める怜司。
パートの中年女性たちとも親しくなり、そのバイトが心地よくなっていく中、かつての客・上山が国語教師として赴任してくる。
上山は怜司に執拗に存在をアピールし、怜司の高校生活が狂い始める。
都会に住む〝個〟な高校生の青春が描かれていたが、ホモセクシュアルの売春の描写などもあり好き嫌いがはっきりしそうな作品である。
また、今までのすばる文学賞作品とは少し傾倒が違う気がした。
私個人としては特別な感想を抱くには至らなかった。
しかし、昨今はこういった小説が増えている。
文学界での流行なのか、事実このような生き方をしている人が多いのか考えさせられた。
<集英社 2002年>
著者: 織田 みずほ
タイトル: スチール