2002年に森田芳光の脚色で映画化された森絵都のコメディ系小説。

いいかげんな天使が、一度死んだはずの〝ぼく〟に言う。
「おめでとうございます、抽選にあたりました!」と。
〝ぼく〟は他人の体に乗り移ることになるという・・・
〝ぼく〟が乗り移ったのは「小林真」という自殺したばかりの14歳の少年。
真は絵を描くのが得意な以外は、親友と呼べる存在も持たないパッとしない少年。
父親は自己中な偽善者で、母親はフラメンコの先生と不倫・・・何もいいところなんて無く思える「小林真」。
乗り移っている気楽さも手伝って、「小林真」が存在する世界をじっくり観察してみる〝ぼく〟。
そして〝ぼく〟は少しずつ気付いていく。現世はそんなに単純じゃない、たくさんの色に満ちていると。

最初はなんだかよくわからなかったが、読み進めるうちに心に染みてくる1冊。
随所随所でじんわりくる言葉が使われていて、自分が中学生だった頃に読めたら何か違ったかなぁなんて思った。
基本的に、こういったコメディ系の小説や何かに乗り移って~的な小説は好まないのだが、友人の強い薦めで読んでみたのだが、思いのほか心に残った。

中高生向けの小説だと思うが、忘れたあの頃が心をいっぱいにしてくれる暖かい作品。
【世界はたくさんの色に満ちている】というテーマは、どの世代にも共感できるもの。学生時代の心を呼び起こしたい時にはもってこい。

<理論社 1998年>

著者: 森 絵都
タイトル: カラフル