スヴェトラーナ・ザハーロワ&ワディム・レーピン “パ・ド・ドゥfor Toes and Fingers” 瀕死の白鳥 という長いタイトルのバレエ・コンサートに行ってきました。

ボリショイ・バレエの名花スヴェトラーナ・ザハロワと、名高いヴァイオリニストであるレーピン。世界一美しいと言われたザハロワを射止めたのが厳ついレーピンで、結婚した頃は美女と野獣って言われてましたね。夫妻による、バレエと弦楽器のコラボ。
ザハロワ主演の「ジゼル」を見た時、大きな体で存在感を放つレーピンをロビーで見ていましたが、ヴァイオリン演奏は初めて聞きました。気軽な曲目を揃えたからか、やすやすと輝かしい音を響かせるレーピン。妻の美を崇めるような、レーピンの包容力に包まれた楽しい時間でした。



会場はシンフォニーホール。音響の良さに、またまた痺れてしまいました。


ツィゴイネルワイゼン、タイスの瞑想曲…と誰もが聞いたことがあるような名曲も、レーピンの演奏で聞くと蕩けてしまいました。レーピンの音色って、中低音はカラフルなのに、高音はキラキラの光の屈折率みたい。頭の中でザハロワによく似たバレリーナが踊り出す。

バレエのみ感想書いておきます。

「ライモンダ」
ライモンダの夢の場。ザハロワの足のライン、もはや人類を超越した美しさ。衣装がバランシンのダイヤモンドかしら?ってくらいスワロフスキーがキラキラ。美しいパ・ド・ドゥだけど、ロブーヒンが持ち上げ要員になってしまって残念。

「ヘンデル・プロジェクト」
私が偏愛するデニス・サーヴィンがパートナー。彼を連れてきてくれたザハロワに感謝しきれない。
ザハロワの衣装は黒のシースルー。ただでさえ細いザハロワの細さが強調され、ストイックな肉体が怖いくらい。たまにアサシンみたいな目付きになるザハロワ、格好良くて痺れました。驚くほどの身軽さ、柔軟性、バランスを存分に生かした振付も見応えあり。サーヴィンのくねくねした動きや魂が溢れ出る表現力に引っ張られ、ふだんのザハロワには見られない濃い表情が現れる。この2人で濃厚なドラマチック・バレエが見たいなあ。けっこう良いペアだと思いました。

「カラヴァッジオ」
今回はビゴンゼッティ振付祭りですね。これもザハロワの凄まじいバランス力が生きて、動く彫像。パートナーはイタリア人のジャコポ・テッシ君。ボリショイ・バレエでメキメキ出世している美青年です。ギリシャ彫刻みたいで、ガッシリとザハロワをサポート。ロブーヒンやサーヴィンも筋骨隆々なんだけど、テッシ君は甘やかさが強い、ラテン系の魅力?

「瀕死の白鳥」
ブラボーが飛び交って、この日一番の盛り上がりでしたが、私はあんまり好みじゃなかった。
ザハロワの凄まじい造形美、完璧な彫像のような姿には見惚れました。まるで、ダイヤモンドで出来たバレリーナの彫像が動いているみたい。人外の美しさだった。レーピンの奏でる旋律が、ザハロワの美しさを崇める讃美歌みたいで、こんなに美しい時間があって良いのかなって不安になるほど徹底的な美。
それでも、美しいと感じる心と、魂が震える事は別ものなんだなあ、そんな不思議な体験でした。

「レ・リュタン」
白鳥のメロディが再び始まって、ロブーヒンが出てきて大爆笑。ザグレビンと丁々発止なテクニック合戦もあって、ロブーヒンのコメディセンスや芸人?っぷりが楽しかった。途中から加わったザハロワの弾ける笑顔が、可愛い。ザハロワ、こんな表情出来るんだ、もっと普通の舞台でも出して、って思うくらいリラックスしてやわらか。レーピンへの愛がなせるのかな。

アンコールはこちら。


ダンサー達も踊ってくれて、盛り上がりました。
チェルダッシュで、「ヘンデル・プロジェクト」のくねくねした動きが出来るサーヴィン、癖になりそう。

休憩無しぶっ通しでしたが、時間はあっという間でした。