このところ、バレエ番組の放送がいっぱいありました。


オレリー・デュポンの引退公演「マノン」は、豪華キャスト。とても美しかったけど、知的で近寄りがたい雰囲気のオレリーにはあまり似合ってないようにも思いました。ピンチヒッターだったデグリュー役ロベルト・ボッレの完璧な身体と顔の美しさは、私はちょっと苦手。ゴチャゴチャした人間の愚かさ、猥雑さを楽しみたいバレエなのに、ギリシャ彫刻のように完成された肉体やダンサーとしての美しさに目が行ってしまいます。オレリーも似たような所があって、物語としての面白さは減ってしまう感じ。やっぱりエルヴェ・モローの故障降板が残念でした。モローと踊った「椿姫」見ておいて良かったです。



オレリーのパートナーとしては、踊りの質感が似ていたルグリとのキラキラした舞台、感情的に揺さぶられ炎が上がるようなエルヴェ・モローとの舞台、2人が双璧。タイプの違うパートナーに恵まれたデュポンは幸せなバレリーナですね。



NHK「バレエの饗宴」は、マニュエル・ルグリがオーディションで選び、指導した子供たちの踊りが、楽しかった。先に放送されたドキュメンタリーと合わせ見て、どんな未来が待っているのか楽しみになる少年少女達。ドキュメンタリーの方は、盛り上げようと意図的に編集されたんじゃないかと思う場面もあり、あんまり好きじゃないですが…。
大人のバレエは、心理描写が売りだったり、ちょっと地味な印象。一つはグランド・バレエの一場面が見たかった気がしました。



マニュエル・ルグリ演出のウィーン国立バレエ「海賊」は、とても面白かったです。話題とは言え、最新の舞台を放送するなんて、NHKはルグリが大好きですね。
バレエ団としては、決して超一流と言えなかったウィーン国立バレエ。ルグリが監督になってから、メキメキと実力を蓄え、魅力的なバレエ団になってきたと言われています。古典バレエを堂々と魅せられるようになったウィーン国立バレエの成長ぶりを、存分に味わいました。
何と言っても、来日公演「こうもり」で愛らしいヒロインを踊ったマリア・ヤコヴレワが、美しいヒロイン。久しぶりに美脚を堪能出来ました。



主要な男性ダンサーが垂直の美しい軸で踊るのを見て、ルグリの指導力が行き渡っているのを実感。パリ・オペラ座を底上げしたヌレエフの薫陶を受け、ヌレエフ・チルドレンと言われたルグリ。今のウィーンのダンサー達は、ルグリ・チルドレンですね。

主役の海賊コンラッドは、踊りがややモッサリ。基本的には王子様タイプなのでしょう。恋に落ちて腑抜けになった首領コンラッドより、裏切る副官ビルバントや奴隷商人ランケデムがもともと好き。ビルバントとランケデムに、たくさんソロがあって、男らしい生きの良い踊りを楽しみました。ビルバントのダヴィデ・ダートは、本当に溌剌として、とても魅力的。ダヴィデ・ダートはアリも踊って欲しいタイプ。アリがいない演出で残念。
ルグリ版でちょっとサプライズだったのは、好色な老人に描かれがちなセイード・パシャがイケメンだったこと。魅力的でハンサムなパシャ、新鮮です。でも全然、踊らないの。せっかく若いパシャだから踊っちゃえば良かったのにね。
衣装もとても美しい。映像で見てこんなに美しいなら、生の舞台はさらに鮮やかなはず。久しぶりにウィーン国立バレエ、来日してくれたらなあ、と思いました。





マリインスキー・バレエのサンクトペテルブルク白夜祭2008は、再放送。ゲルギエフ指揮、ストラヴィンスキー作品「火の鳥」「春の祭典」「結婚」。
バレエに革命を起こしたバレエ・リュスの時代を感じさせる、なかなかインパクトある舞台です。火の鳥のエカテリーナ・コンダウーロワをはじめ、主要な役は美形を揃えました!





火の鳥は、民族色の強いレオン・バクストの美術も素敵。「春の祭典」「結婚」は、今見ても振付にインパクトがあります。
音楽的にも充実した、こんな豪華な舞台、生で見てみたいです。


夏は、バレエも色々と見に行く予定を立てています。特に、ブノワ賞を受賞して、今波に乗っている八菜オニールさん主演「ドン・キホーテ」が楽しみ!