アパートで一人暮らしをしていると、ちょくちょくと訪問業者が訪ねてくる事がある。


それは主に

宗教や新聞の勧誘などが多いのだが、時々、

「どちら様ですか?」
「どういった御用件ですか?」

と、ウチはインターホンでなく玄関チャイムなのでドアを開ける前に訪ねても

名乗らないし、用件も言わない

輩がいる。
そんな奴はただただ



ドアを開けろ


と催促してくる。

私は基本的に、

誰だかわからない
用件がわからない
興味がない
約束もしていない

といった来訪者にはドアを開ける事はしないので、そんな時は

「お帰りください」

と、相手にしない。



その後、何度か玄関チャイムを鳴らしていく奴もいるが、完全無視をしている。

正当な業者なら、ちゃんと事前にチラシなどで
「お知らせ」があり、後日、都合の良い日に訪問してくれる。

必ず、アポイントをとってくれるのだ。




大体、名乗りもしない、用件も言わない奴にドアを開ける事なんて出来る訳がない。


開けてもらえると思う方がおかしい!


以前、


「お帰りください」

と言ったら


「訪ねてきているのに失礼じゃないですか!!」

と逆ギレされたのには開いた口が塞がらなかった。


自分がおかしいのか?


と一瞬でも思ってしまったが、
これもヤツらの常套手段かもしれない!と、ますます訪問業者には警戒心を強めている私である。








そんなある日、ビックリする業者がやって来た。

コロナの緊急事態宣言が発令される少し前の事だ。


休日にのんびりしていると玄関チャイムが鳴った。


ちょうど掃除中だった私はいつもの様にドア越しに返答した。


「どちら様でしょうか?」

「わたくし、○○(会社名)のものですが、
本日の13:00にお約束いただいていたのでうかがいました!」


は?


そんな約束した覚えは全くなかった。
会社名にも聞き覚えがない。


「そんな話は聞いていません。お間違いではないですか?」

「いえ、確かにこちらの□□号室に間違いございません!
お約束をいただいております。」


確かにウチは□□号室だが、いかんせん覚えがない。



「一体、どういった御用件ですか?
お約束した覚えは全くありませんが、いつにどうやって約束をしたのでしょうか?」


わからない事は聞いてみた。
単純に相手がアパートを間違えている事だってあり得る。

すると、相手は用件を言わずにビックリする事をさらりと言った。


「そんなはずはありません。
奥様からお約束をいただいております!」




奥様⁇

私はまごうことなき独身の一人暮らし

「奥様」と間違われるようなパートナーも今はいない。





明らかにである。




しかし、私はもう一度確認をした。



「うちの妻がですか?
本当にうちで間違いありませんか?」


「はい!間違いありません!!
奥様からお約束いただいております!」  



「嘘つけ!
ウチは一人暮らしだ!!
帰れ!!」

相手が一瞬、沈黙した。



「え〜まいったな〜」
 
と、この後に及んで、まだブツクサ言っていたが、そのまま立ち去っていった。





怪しすぎる…



そんなにドアを開けさせたいのか…。



こういう不可解な訪問者はとにかくドアを開けさせようとする。


一体、ドアの向こうでどんな展開が待っているのか?


こうなってくるとそんな好奇心すら湧き上がってくる。



よくポストに不動産関係のチラシが多いから、不動産投資?


何にしてもやはり私はドアを開けない。


嘘までついてドアを開けさせようとするものが


真っ当な物であるわけないのだ!!




過去にも中々帰らないような輩は来たが

「奥様」などという

架空のキーワード

を持ち出してきたのは始めてだった。


仮に、向こうの勘違いだったとしても、私には不信感しかなかった。


故に私はこれからも


ドアは開けない。

世の中、何が起きるかわからない。

用心していこうと思う。



インターホンが欲しいなぁ。