ドキュメンタリー番組を観た。


その番組の主人公は126万人に1人と言われている難病を患っていた。

発作が起きると全身を襲う激痛。

17歳の時に発症し、それが難病だと診断されたのは34歳の時。


それまで彼は

「こんな原因不明の病気で苦しんでいるのは
きっと世界で自分独り」

誰もわかってくれない

という孤独の中で生きていた。










それを観ていて痛いほどその思いが流れ込んできた。




あぁ…わかるよ。


私にもそう思っていた時があったよ。




私は女じゃない?

男なんだ?男になりたい?
  

そんな馬鹿げた事を考えるのは
自分1人だけなんだ。

そう思いながらも、女の子として扱われると
不意に涙が溢れる時もあった。
 

「どうしたの?」


そんな時は周りの人達はあわてた。


「何故泣くの?」


何故….?  

私は何故泣いているのだろう?
 

わからない。

馬鹿げてる。


こんな事を考えて泣いているのは自分だけなんだ。


何故ならそれは





自分は頭がおかしいからだ。





堂々巡りの感情を自分の中に閉じ込めて、 
それが時折、涙となって溢れたのかも知れない。



時は経ち、高校卒業を目前とした頃、

私はある深夜番組で「彼ら」を見た。




「彼ら」はスーツ姿でホルモン治療をしているという。


「彼ら」は「彼ら」ではなかった!

「彼女たち」だった!

えぇっ!
マジか?!

私は画面に釘付けになった!!


私が初めて見た「当事者」だった。

「彼ら」の話はまるで私自身の自己紹介のようだった。



幼い頃からずっと自分の性別に違和感を抱いて生きて来た。




性同一性障害


という言葉を知った瞬間だった。



ありなんだ!!

こういう人間はありなんだ!


独りじゃなかった!


それまで自分を覆っていた膜のようなものがパチンと弾けたような気がした!


光が差した瞬間だった。




独りじゃない!!



その思いが私の人生に明るい未来を与えてくれた。



まだガイドラインなんてなく、まだまだインターネットも普及していない頃のお話。