一瞬の事だった。


「未だに赤を好んで着るんですね」



そう言って彼は笑った。












過去世の中で、私は鎧を着て闘っている人生が多かったようで、いろんな時代や立場や国の記憶が断片的にある。

その中で、ひときわ強烈な記憶の中で私は好んで「赤」のマントや鎧を着ていた時期がある。

その時の私の立場は、まがりなりにも
「大将」だったので


「目立ちすぎます」 


と、側近には大不評だった。

でも、私自身は気に入っていた。
目立つの確かの様で、当時、戦場に赤を纏い現れると、戦場にどよめきが起こるのを感じる一瞬がなんともいえない快感だった。




遠い遠い遥かな記憶。


私の中の遥かな記憶。


それを知るのは私だけの記憶。



…のはずだった。








ところが今年のこと


年が明けて、私は通勤用の上着を新調した。

ずっと着ていたダウンジャケットが随分とくたびれてしまったので、ダウンジャケットを新しく購入した。

自転車通勤の私は通勤着を決める時、夜間の事や悪天候の事も考えて、明るめの色をチョイスする。

その時選んだのは「赤」だった。

過去世の記憶もあるが、以前に受けた占いでラッキーカラーを尋ねた事が3回ほどあり、3度共に「赤」という返答だったのもある。



これは偶然なのかな?



と密かに思っている。



なんにしても、新しいダウンジャケットは嬉しくて、私は職場のロッカーで帰り支度を楽しくしていた。



「お疲れ様〜」



そこへ同僚達も帰ってきた。
みんなも着替え始めた。

「あれ?オダさん、ジャケット買ったんですか?」

1人が私のダウンジャケットに気がついた。


「やっと買ったよ!新しくすると嬉しいよね!」


すると、その中の1人が言ったのだ。




「未だに赤を好んで着るんですね」




え?







言ったのは、同僚の1人だが、持ち場も遠いので顔を合わすと挨拶をする程度の仲でしかない奴だった。

親しく話した事もない。

ましてや私は、スピリチュアルな話題は職場では全くしない。

ちなみに、通勤着で「赤」をチョイスしたのは今回が始めてだった。

前のダウンジャケットは明るいキミドリ色だった。
大体「未だに」と言われる程の接点はない。
彼と会ったのは彼が異動して来た半年ほど前が始めてである。





彼はそれだけサラリと言うと、何事もなかったように、今日あった仕事の事を違う同僚と話始めていた。



私も何も言わずに上着を着て



「お疲れ様でした」



と、同僚達に挨拶をして家路についた。










不思議だった。



「未だに赤を好んで着るんですね」


彼の一言。


どうしても聞き逃す事が出来なかった。

彼は今も元気に出勤していて、毎日顔を合わす。

でも、相変わらずの仲で挨拶を交わすくらいである。
当然、あの発言についての事は未だにあのままにしている。


無意識だったのかもしれない。

なんの意識もなく、出た言葉だったのかもしれない。




もしかしたら、彼と私は「あの頃」の顔見知りだったのかもしれない。




そう考えると納得がいく。

私の魂が納得する。


同じく、彼の「魂」が「意志」を飛び越えて、あの発言をしたのかもしれない。
それは彼の「魂」が納得したのだろう。


だとすれば、面白い。



そんな事もあるんだなぁ

まだまだ自分の予想外の出来事はたくさんある。



世の中、目に見えるものが全てではない


そんな言葉を思い出した。





信じるか、信じないかは貴方次第です!