念願だった乳房切除手術後、私は1泊の入院をしました。


術後、ベットの上で目が覚めるとボンヤリとした頭で少しずつゆっくりと「今の状態」わかってきました。

切除後の血を抜くために両脇から両胸へと管が入っており、しっかりとしたサポーターが巻かれていました。
手首には点滴があり、術前に入れられた尿のカテーテルがまだ入っていました。

寝返りがうてない状態でした。

まるで仰向けに転がされたカメです。



ありゃ、これは辛いかも…。


下手に動いてどこかに痛くなり始めたら大変です。

私は大人しくしている事にしましが、段々腰が痛くなって来ました。


こ、腰が痛い!

でも、あれだけ寝たんだからもうすぐ朝だ。
朝になればきっと状態が変わるはずだ。


と思い、壁にかけてあった時計を見てビックリしました。


なんと18:00ちょっと過ぎでした。



ウソだろ――――ッ!!



自分の中ではもう夜が明ける位寝ていた感覚でした。


「痛みは大丈夫かな?」


その時、執刀してくれた先生と看護師さんがやって来ました。

「あ、大丈夫です。」


「…右の方があまり溜まってないな。左は…大丈夫か。」


両脇に下がっている血を溜める為の袋をチェックして先生が言いました。

「まぁ、今晩は様子みてみよう。明日の朝また診て退院だ。」

「何かあったらナースコール押して下さい」

と、ナースコールを手元において看護師さんと先生は行ってしまいました。



長い夜の始まりでした。



今までの人生の中、こんなに長い夜はありませんでした。


途中、腰の痛みに堪えかねて薄い低反発クッションをあててもらいましたが、焼け石に水でした。

そのせいか18:00過ぎに目が覚めてしまってから全然眠れませんでした。


さ、最悪だ…。



そんなだったので翌朝、先生が現れた時には

「管が外れる!起き上がれる!」

と心底嬉しかったのを覚えています。


先生は血抜きの為の両脇の袋をチェックして言いました。


「……やっぱり右のが出ていないなぁ。う~ん、ちょっとこれ出さなきゃまずいから出すね。」


え?


先生は胸のサポーターを外すと何やらジョキジョキと私の胸の一部を切っています。

「後で手術できれいに治るから」

と先生は言いました。
後からわかったのですが、その時先生は私の胸の中に溜まってしまった血を抜くために乳輪を3分の1ほど切ったのです。

そして上から右胸を袋へ絞り出す様に力一杯押しました。


い、痛い――――――――――ッ!


私は思わず恥ずかしい程の悲鳴をあげてしまいました。

脳天まで突き抜ける痛みでした。

今まであげた事のない悲鳴でした。


お構い無しに先生はグイグイと押します。


「よし、よく頑張った!」


いやいや、「頑張った」というよりは「問答無用」でしたよ。先生。


「もう少し出ても良いんだけどなぁ」


と先生がつぶやきながら見た右袋には血が半分ほど溜まっていました。

左袋にはたっぷりと八分目位に溜まっていました。


あぁ、本当だ。
圧倒的に右が少ない。

「まぁ、様子みよう。」

と、先生は管を外してサポーターを強めに巻き直してくれました。


私は日々が管が外れてほっとしましたが、先ほどの処置の激痛に半ば放心状態でした。

「じゃあ、朝ごはんを食べて大丈夫なら今日は退院しましょう」


ちょっとした朝ごはんを食べて、私は無事に退院しました。


時間は朝のラッシュが終わった頃でした。

痛みはありませんでしたが、やっぱり手術後のせいか、はたまた朝の処置のせいかボーッとしていました。



焦らずのんびり帰ろう…。



電車はすいていました。

でも、最寄りの駅までが近くなって来るとホッとしたのか、急に目が回り気分が悪くなってしまいました。

仕方がないので、さらに空いている各駅電車に乗り換えて横になっていました。

最寄りの駅につき、倒れ込むようにタクシーに乗って帰宅すると私は上着も脱がずにバタンキューでした。


でも、満足でした。

あぁ、長年のコンプレックスだったものから解放された…。


あんなに病院の長い夜には全然寝れなかったのに帰宅した私はそのままグッスリ寝てしまいました。





おっぱい、バイバイ!~最高の夕食~に続きます。