2007年5/1、都内にある美容形成外科で私は胸切除手術を受けました。

いわゆる「胸オペ」と言うやつです。

今にして思えば、もう少しお金を貯めてタイにて内性器摘出と同時に受ければ良かったのかも知れませんが、当時はとにかくふくよかな女性の象徴とも言える乳房を摘出して、平らな胸になりたくて仕方がありませんでした。

その病院を決めたのは「1泊2日」の入院をさせてくれたからです。

当時調べた他の病院は全て日帰りで、日帰りするのには不安がありました。



当日、朝から友人達からの「おめでとう!頑張れメール」がたくさん届きました。



人生初の手術、人生初の入院、そして念願の手術!!




ですが、何故かイマイチ実感がわかずにいたのを覚えています。

この乳房がなくなることが信じられなかったのかも知れません。



まるで他人事の様に手術着に着替えました。



私が受けた術式は、乳輪の淵に半周ほど切り、そこから乳腺を摘出するという方法でした。




腹腔内麻酔を首の所から注入し、安定剤で眠ります。

「数を数えて下さい」

「はい!いち!にぃ!さん…」

眠らないうちにスタートされてはかなわない!と、私は大きな声で数えました。

「きゅう」までは覚えていましたが、あとは寝てしまったようです。




私のコンプレックスを取り除く手術はあっけないほどスムーズに始まりました。






………。

………………。

………………………。




う~ん?

…………ここはどこだ?



私はふと目を覚ましました。

目の前はカバーの様なもので覆われていて周囲が全く確認出来ません。


声が聞こえて来ました。


「通常よりサイズが大きいって事ですか?」

「いや、サイズは特別大きいって訳じゃない」


…あぁ、そうだ。

胸オペだったんだっけ?

ありゃ?起きちゃった??

「今、何時ですか?」なんて言ったらビックリするかなぁ…。


なんてボンヤリと思っていた次の瞬間、


―――バリバリバリィーッ!!――――

痛みはありませんでしたが、しっかり、ハッキリと左の乳房が剥がされる様に摘出されたのを感じました。


……あ、今とれたんだ。


そして私はまた眠ってしまいました。





……さい……


…ください………


「起きて下さい!!」



ハッ!!!



次に目を覚ました時には、もう目の前の覆いもなくて、3人の看護師さんにのぞきこまれていました。

「わかりますか?大丈夫ですか?」

自分ではハッキリとしているつもりでも、何だか全体的にボンヤリとしていました。

それどころか、

「イビキ、かいてましたか?」

なんて検討違いの質問を看護師さんにしている始末です。

上手く口も回っていない感じでした。


すると、横から執刀してくれたドクターが笑いながら言いました。

「無事に取れたよ!思ったよりも多く取ったな」



いまだに後悔している事があります。



この時に何故、摘出した乳腺を見せてもらわなかったのか―――!

見たかった!!(単なる好奇心です)


この時は頭がボンヤリとしてドクターの言葉に反応できなかったのです。


「あ!あんまり興味ないか…。」

案の定、ドクターは話を終わらせてしまいました。


「さぁ、ベットに移動しますよ。」

両脇にいた看護師さんに言われました。

入院の為のベットは手術室の扉のすぐ向こう。

歩いても5~6メートルと行った所でした。

「ゆっくり起き上がれますか?」

看護師さんの介助で難なく起き上がり、私は手術台から降りようとしました。

「あ、ゆっくりで良いですよ。」

と、両脇から看護師さんが二人がかりで私を支えようとします。


「大丈夫です」


と、言おうとしましたが、大丈夫ではありませんでした。


足に全く力が入らないのです。

腰が抜ける――とはこういう事なんだ………。


大丈夫どころか、看護師さんたちに支えられてやっとの思いでベットにたどり着いた私は
そのまままた眠ってしまいました。





時間にしたら、3~4時間の出来事だった様に思います。





私が寝ぼけている間に、悲願だった「乳房切除」は終わっていました。



生まれてから30年以上(当時)にわたる自分自身にとっての呪縛から1つ解放されたのです。





何かから解放される時っていう瞬間は以外にアッサリと訪れるものなんだと、10年経った今、実感します。


当時はまだまだ術後のケアに四苦八苦する日々が続くのでした。





最後までお読み下さりありがとうございました。


「おっぱい、バイバイ~入院~」に続きます。

良かったら、また読んで下さると嬉しいです。