以前から知り合いだった大手生保の男に頼んだ。

 

 久々のピロコンだ。すんごい張り切っていた。すんごい楽しみにしていた。天気は雨でもアタシはうかれていた。場所も代官山。悪くない。



 が、結果は「途中抜け」するくらいブーっだった。


 つうかアタシが男に頼んだのは「若いイケメン」である。


 若いイケメンがいったいどこにいた?


 女子はみんなそれなりに経験も金もあるコたちだ。外見だって悪くない。いや、まったくいい。金曜日のメンツにはとても釣り合わないくらいだった。


 アタシの大親友がふといった。

「女のコってどんどん可愛くなってるけど、男の平均って年々カッコ悪くなってるよね。最近、すんごい可愛いコとブサイクな男の組み合わせって多くない? 逆はないんだよねぇ。すんごいカッコいい人ってみない」


 たしかにその通りかも。


 つい、5年前までは夜の街に行けば、芸能人にひけをとらない男たちがわんさかいた。でも、いまは、なっかなか見つけられない。


 一昔前、クラブが「選ばれた特別な人種しか集えない場所」だったときは、びっくりするような大物と簡単に知り合えたものだ。あのころが懐かしい。アタシが歳をとったのもあるだろうが、六本木や麻布はここのところ、ちょっと簡単によそ者を出入りさせすぎだ。たかだか20年のアタシにいわれたくないだろうが、そう思う。

 

 アタシの遊び場は大学のころから六本木と西麻布。なんでかっていうと「人を選ぶ街」だからだ。すごく排他的。遊びなれていて、何より華やかなスタイルじゃなければ「田舎者」と鼻で笑う風潮があった。いまでも、そんなところは少しはあって、アタシたちがカラオケとしてよく行くお店は「行けば必ず大物がいる」。


 服装だって、どんなにみんなが笑ってもアタシがしているような胸や脚を出した強烈な格好をしていないと地味すぎているのが恥ずかしくなる。そういう世界がある。一般的におかしくても、そこの世界ではアタシのようなスタイルの女じゃなければ受け入れられない。


 アタシは安いボディコンを着ているように思われがちだが、実はすべてオーダーメードでつくっている。ボディコンは特に安っぽく見えるからそこは頑張っている。


 ピンヒールは13センチ。


 アクセサリーは偽物なんてみんなつけていない。


 冬はミンクの毛皮に夏はリゾートの話で盛り上がる。


 そんな世界はわずかだが、まだ、存在している。


 アタシはやっぱりそこで生きて行きたい。



 理由のひとつは「下町うまれのコンプレックス」。


 錦糸町はいまでこそ、まぁ、殺される心配のない街だろうが、アタシが住んでいた頃は「やくざと競馬で負けた酔っぱらい、木刀を持って歩いている男」なんばかりがいたところだ。


 組事務所もあの頃はいくつかあって、決まった洋食屋に行くと「着流し姿でポークカツを食べる親分」を子分たちがとりまいている。子供のアタシは親分に「おいでおいで」されて、お菓子をもらったりした。「おう。嬢ちゃん」と声をかける窓からは全身刺青の男が手を振っている。


 アタシは。

 

 そんな街がイヤでしかたなかった。


 ダサくて、ふるくて、面倒くさい。


 抜け出して、スポットライトを浴びたいとずっと思っていた。


 だから、アタシは「選ばれた人種」で居続けるために努力に努力を重ねたものだ。


 

 それがいまや、どうだ。

 クラブは観光地状態。麻布に危険な香りは少ししかなくなった。

 まったく、退屈な世の中になった。


 

 で、合コン。

 彼らの会話にはところどころ「オレたちって勝ち組」ってのがにじみでていた。


 大学名、会社名、趣味のゴルフ。実家がどこどか……。


 合コンは婚活ではない。


 結婚するのが目的ではない。そんな肩書まったくなんの武器にもならない。


 女のコたちはけっこう頑張っているコたちで誰も口にしなかっただけで、彼らの年収の数倍は超えている。しょせん彼らは会社員。あのコたちは内緒にしてるだけで「経営者」なんだよ! アタシも含めてな。


女子友には「若いイケメンがくる」っていってしまっていたもんだから、大ブーイングをくらった。


「つうか、鍛えたり、エステ行ったりして外見に気を使ってるんだから男も頑張って欲しいよね。外見がダメでもいいいよ。それを補えるトークスキルがあれば全然いい。あの人たち話題もないんだもん。当然、2次会なんてないよ」



 顔がダメなら会話スキルを磨け!


「ワールドカップ観てます?」


 女が観てるワケねーべよ!


 ゴルフが趣味なら、ゴルフに誘えよ。



 いろんな男たちを見てきたアタシたちだ。いまでもアタシが持っているトンでもない人脈は夜の街がくれた。


 そんなアタシたちにたかだか外資だ、N○○だなんだくらいは通用しない。



 金じゃなくて、キラキラが欲しいんだ。イケメンは迫力だ。顔のつくりや容姿じゃない。オーラと自信。これが男をイケメンたらしめているものだとアタシは思う。



 さっそく、けっこうなオーラを持つ男友達に雪辱戦の合コンを頼んだ。頼れるヤツだ。


「お。ピロコ。ブサイクな金持ちがいいか?」


 というので、

「いや、今回は金のないイケメン。ワリカンでもいいから。とにかく若いイケメン」


 友達はいつもアタシのムチャな要求をかなえてくれる。


 雪辱戦にこうご期待だ!


 悪口を書いているようだが、これは現実なのだ。


 今回の教訓「男のイケメンは女の可愛いコなんかより全然信用できない」


 需要と供給が合致したとき、合コンは成功はするのだ。