行く先々で
古民家を見つけると

つい立ち寄るという
好きな人との
偶然の一致


その偶然が
いつかどこかで
重ならないかと
密かに願うことがある



そんな
偶然の可能性は
限りなくゼロ


それでも
もしかしたら
起こるかもしれないと

奇跡という文字を
心に描くのだった



子供が小さかった頃
家族で出かけた行楽地

そこには意外にも
古民家があった


中に入れたので
見学することにした


昔ながらの家は
縁側が広く

縁側から見える景色が
のどかで美しかった


残念ながら
そこから撮った写真は
ないが

暫くの間 その場に立ち
思いにふけていた


**・..・***・..・**




縁側でひとり
美味しい煎茶を
飲む私


すると
男性が右隣りに
そっと座る


お互いに目が合って
「あ!」と声を出す


「深海さん」

「しんちゃん」

そう
そこにいるのは
好きな人


思わずニックネームが
出てしまった


しんちゃんと言ったのは
その時が初めてだった



72歳になった私に
しんちゃんは
気づいてくれた


そして私も
同じように