もう少し
一緒にいたい



夫と付き合い始めて
間もない時

帰り際に私の口から
咄嗟に出たひと言





よくそんなこと
言えたもんだな(苦笑)



今思うと

赤面してしまう



それまで
恋に関しては
ドライだったので

可愛い態度も言葉も
出せずにいた


なので 演技でも

そのようなことは

言えなかった


たまには女の子らしく
甘えてみたり

ときめかせるようなことを
言えたら

もっと相手を
喜ばせることが

できたはずなのに…





そのひと言を
好きな人の前でも
言いそうになったことが
一度ある


瞬時に危険信号が
点滅した




初夏の日差しが強い
ある日

屋外にある駐車場で
30分近くも
立ち話をしたことがあった


挨拶を交わしてすぐ
車に乗るつもりだったが

些細なことがきっかけで
会話が続いたのだ


紫外線を
気にしながらも


話をしている間
願っていた


もうこんなこと
この先ないかもしれない 

だから 少しでも長く
会話が続きますように と



時間が経ち
会話が途切れそうに
なった時

例のひと言が
頭のなかを駆け巡る


しかし

常に強い理性が
働いているので

発することは

あり得ないこと


案の定
声に出すことなく
事が済んだ


しかし彼の口から
意外なひと言が出た


どこに行けば

深海さんに
会えるのかな



何ということだ…


あまりにも
予想外な展開に
戸惑うばかりだった


このひと言には
“会いたい”という想いが

含まれている


それなのに彼は
ストレートに言わず

遠回しに言うのが
心憎い





彼が言うより先に
私が言っていたら
どうなっていただろう


ときめいたかな


たとえ
ときめいたとしても

私への気持ちが
恋愛感情まで
至っていなければ

一瞬空気が
凍りつくだけだ



もう二度と
言うことのないひと言


だけど
もう一度だけ
言ってみたくなる



いつかどこかで


別の誰かに