ポカポカ日和、春がもう来てます。

 

「春」安西冬衛

 てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った。

   (韃靼海峡: 樺太とユーラシア大陸間の海峡、間宮海峡)

 

実家から今日もせっせと古本を運び出す私。

同じ本が2冊3冊となる事も。

同じなら手元には一冊あれば充分と思いますが、

手放せない事象に出くわすことも。

それが訳者違いの新旧対決を生み出したわけです。

 

「悪魔の辞典」A.ビアス

 

(左:1975年初版の17版 角川書店版 右:1997年初版の10版 岩波文庫版)

 

比較してみましょう❣️

(左が新版、右が旧版本)

 

まず総ページ数 

旧版 442ページ 新版 318ページ、

これは何を物語る、ズバリ新版は語彙が幾つも割愛されている?

または新版の訳は簡略化されている?

(字が小さい旧版が100ページ以上多いとはいかに?)

これは致命的とも言える?

 

次に語彙の並び順

旧版 アルファベット順(ただしアイウエオ順の索引あり)

新版 完全アイウエオ順。(アルファベット順の索引あり)

これに関しては辞書とは思っていないのでさほど不自由は無いが、

2冊を見比べるにおいて索引は大いに役立った。

 

さて一番大事な訳の比較ですね。

いくつか同じ語彙で楽しんで下さい❣️

 

①「Revelation」

旧訳「黙示録」

 使徒ヨハネが自分の知っているすべての事を隠して

何も書いていない有名な書物。

黙示なる行為は注釈家によって行われた。

ところで彼らは何一つ知ってはいないのだ。

 

新訳「天啓」

自分は愚か者であると、人生の黄昏時になって発見すること。

 

②「Allegiance」

旧訳「忠誠」

 この「忠誠」なるしろもの おそらくは

民の鼻にがっちりはまった環なるべし

嗅管 絶えず正しき方に位置し

神権帝王のかぐわしさに接するも そのためなるべし。

 

新訳「忠誠」

 税金を課する者と課せられる者の間に

取り交わされている伝統的な義務の契約。ただし、

両者の関係は逆にすることができない。

 

③「Politics」

旧訳「政治」

 網領競技といった按配で、仮装して行う利害損得の争い。

私欲のため国政を運営すること。

 

新訳「政治」

 主義主張の争いという美名のかげに正体を隠している利害関係の衝突。

私の利益のために国事を運営すること。

 

いかがでしょうか?

①と②の違いにはびっくりですね。

 

全くの別訳からほとんど同じ訳まで

まだまだ面白い訳違い多数あります。

 

結論としましては、

私は可笑しみや皮肉高めの旧版が好きですね。

おそらく原文に忠実なのはこちらではないでしょうか。

 

 

新版は簡潔ですっきりと読みやすいです。

ただし、読み比べるとあっさりしすぎて、可笑しみを感じられない気がします。

 

というわけで、

比較する楽しさを知った私はどちらも手放し難くなってしまった。

つくづくそんな無駄な作業に時間を費やす自分に呆れます。

そして本が増える。

困った困った。

 

本日も長々とつまらない駄文にお付き合い頂き、

誠にありがとうございました。