果たして親のことを冷静に書くことができるのか、ちょっと疑問ですが、トライしてみます。2投目です。

 

心臓の検査では異常が見つからなかった父ですが、今度は新たな宣告が。

 

ある日の早朝、母から電話がありました。

「お父さん、具合悪いのよ。今日は透析なんだけど、ふうふう言ってるから、タクシーで行くように言ったの。分かったとは言ってたけど、自家用車で行っちゃうかもしれないから、あなたから念押ししてくれる?あ、バスが来た。お母さん、仕事に行くから。お願いね」

 

ふむ。どれくらい具合悪いんだろうか。

電話してもいいけど、近くなんで、様子を見に行く。

「具合どう?」

「微熱があってだるいんだよ」

「自分でタクシー呼べる?」

「ああ、できるよ」

「そ。じゃね」

 

帰宅後、時計を見る。透析まであと1時間か。なんか、寝起きのせいか、ボロボロのじじいだったな。私の出勤は12時だから、朝送るだけならできる。しゃあない。電話する。

「お父さん、行きだけ送っていこうか?透析やってる所、覚えておきたいし」

「助かるよ」

 

ということで迎えに行きました。

腎クリニックは3駅先(車で10分)の駅前でした。

「駅前じゃん。帰りは駅でタクシー拾えるね」

「ああそうだな」

「お父さん、こういうこともあるからさ、無料送迎サービス使ったら?前から言ってるじゃん。もう年なんだし、免許返納した方がいいよって」

「・・・送迎サービスのことは聞いておくよ」←嫌そう


うちの車は座高が高いので、乗り降りは息を切らしてふうふう言ってました。後で思い出したけど、うちの車、福祉車両で、後部座席は電動で昇降するんだった。長年使ってないから忘れてた(うちの息子は暴れるので、緊急停止してしまい使えず(泣))。

 

母にLINE。

「無事送り届けました」

「ありがとう。帰りはお母さんが腎クリニックまで迎えに行きます」

「お父さんには言っておきましたが、送迎サービスのこと、聞いておいた方がいいと思います。自宅送迎なのか、今から頼んだらいつ頃から乗れるのか」

「わかりました」

 

2人に言っておいたから、聞いてくるだろう。

 

午後、母からちょっと支離滅裂なLINEがありました。

 

「ドクターから話がありました。熱が37.1度(自宅)~37.3度(クリニック)あったので弱い鎮痛剤を出しました。両手両足が動かないそうです」

「透析中、以前はオンライン麻雀をやったり読書したりしていましたが、最近は寝ていることが多いです」

「年齢的なこともありますが、以前より怒りっぽい、忘れっぽいと思います。認知症ではないかと看護婦さんも言います」

「ここでやってるのは心電図、血液検査です。脳の検査もした方が良いです。物忘れ外来というのがあります」

「処方した薬はたくさんあり、時々忘れることもあるようです」

「私も同じように感じます。物忘れ外来は半年前に受けましたが異常ありませんでした。でももう半年経ってるから進んだかもしれません」

「好きな食べ物を食べていいです。あまり制限しなくていいです」

 

全部ドクターの話?途中、看護婦さんの判断も混ざってるけど、それは看護婦の印象であって、ドクターの診断ではない?最後の方はお母さんの意見なのかドクターの意見なのか、もう、主語が分からん!とイライラして電話しました。

 

母は小声で言います。

「ドクターの話よ。お父さんが隣にいるから話せないわ。認知症かもしれないという話は、私だけにあったの」

「お父さん抜きで?」

「そう」

「たまたま?それともお父さんにわざわざ席外してもらって?」

「たまたまだと思うけど・・・。とにかく電話は無理だから切るね」

 

ううむ。

母は話をまとめるのが下手なので、もしかしたらドクターの話に自分の意見が混ざっちゃったかもしれません。

でも母によれば、「半年前に物忘れ外来を受けたが、それから時間が経っているので、再検査した方が良い」とのこと。半年間で進んじゃうのか。


それにしてもドクター、父抜きで話したのか。癌の告知みたいに、本人には直接言わないものなのかな。だけどまだ頭しっかりしてるから、父が納得しないと、病院に連れて行けないじゃん。騙して連れて行くものでもないし・・・。

 

と悶々としていたら、母から「お父さんに伝えた」とLINEがありました。

「お父さん、医者はなぜ俺に直接言わないんだと怒ってる」とも。

 

あーあ、怒りっぽい父が、烈火の如く怒ってる顔が目に浮かびます。ドクター、「最近怒りっぽくなった」と言ったそうだけど、怒りっぽいのは昔からで、というか、昔の方がずっとずっと怒ってて、最近穏やかにだっただけなの。素が出てきただけなんじゃないかなぁ。怒ってる父に何を言っても伝わらないのは、昔から経験済みなので、今日は放っておく。

 

翌日、援護射撃する。ファミリーLINEに

「お父さん、物忘れ外来の予約はとりましたか」

と入れました。

 

すると、しばらくして・・・

父から大激怒の電話です。

 

「なんで医者は俺に直接言わないんだ!」

「さあねえ。私に言われてもねえ」

「俺は1年前に物忘れ外来を受けたけど、異常ないと言われたんだ!」

「それは良かったね。あれ、1年前なの?お母さんは半年前って言ってたよ。ドクターが『半年間じゃ随分前ですね』って言ってたんでしょ?1年前じゃ、もっと前じゃん」


母さん!←隣にいる母に怒鳴っているのが聞こえる

母さん!前ってなんだ!おれが受けたのは1年3か月前だ。それをお前、半年間と言ったのか!


「お父さん、お父さーん!前ってそういう意味じゃないよ(父が言ってる意味は分からんけど)。半年経ったら症状変わってますから検査してくださいねって言われたんだって。1年3か月も経ってるなら、さらに症状変わってますねってことでしょ。ますます検査受けた方がいいじゃん」

「2020年8月に受けたんだ。1年3か月前だ」←しっかり覚えてると言いたいのかな?

「それはそれとして、医者はなんで俺に直接言わないんだ!」

「さあね。それは私にもお母さんにも分からないよ。医者の気持ちは医者に聞いてくれないと。私の勘だけど、物忘れがありそうな人に、重要な話をして忘れられたら困るから、予約しなかったら困るから、お母さんに言ったんじゃないの?」

「お母さんは、たまたま行ったんだぞ!前もって医者から呼ばれた訳じゃないんだぞ!」

「うん、そうだね。具合悪いからお迎えに行っただけだよね。お医者さんはいつか言おうと思ってたら、たまたまお母さんが来てラッキーって思ったんじゃないの」

「そんなことあるものか!だいたいあの医者は、いつも頼りないんだ。俺が具合悪くても様子見ましょうと言うだけなんだ」

「ふうん、そうなの。・・・でもさ、お医者さんの考えは、私やお母さんじゃなくて、お医者さんに聞かないと分からないよね。うーん、例えば、あなたは癌ですとか、余命1年ですとか、ドラマでは患者本人じゃなくて家族に言うじゃん。もしかして認知症もあれの類かもよ。とにかく、直接言ってくれなかったことが不満なら、次回、お医者さんに直接聞けばいいじゃん」

「・・・わかったよ」

「落ち着いてね」

 

めちゃくちゃ怒っていた父でしたが、最後は憑き物がとれたみたいに静かになりました。もしかしたら今頃母に怒鳴ってるかもしれませんが、「私や母に言っても仕方ない、医者の気持ちは医者に聞いてくれ」というのが伝わったなら…。

 

そして翌日。

今日も透析の日です。一昨日、あんなに調子が悪くて、私が車で送って、帰りは母が付き添ってタクシーで帰ったのですから、「今日も送ろうか?」と聞きました。母も「迎えに行きます」と言います。でも父からLINEが。

「昨日からすっかり良くなりました。体調はすこぶる順調で以前と同じ状況になりました。今日から自分の車で行きます」

 

でたよ、でたでた!かまってちゃん病です。

父は昔から「俺は具合が悪いんだ、かまってくれ、優しくしてくれ」オーラがすごいんです。必要以上に弱弱しいのを演出します。男なんだから、弱いより強いアピールすればいいのに、と思っていました。でも「箸が持てない」とかってアピールするんです。弱い男はモテると思っている節がある。と、私の心に怒りの火がつきました。

 

「あ、そ。それなら私はもう送迎しないよ。でも、自家用車より送迎サービス使った方がいいよ。聞いてきたの?」

 

聞いたけどチラシをくれただけで、それはホームページを見ればわかることでした。あーあ、老人2人に任せた私がバカでした。やはり肝心なことを聞いてない。でもここで私が動くと、早いけど、本人のためにならないし、私が「また私が犠牲になった(面倒かけられた)」と思ってしまうので、動かないことにします。

 

「具合悪くなってから頼むより、元気なうちに頼んでおく。これが介護の鉄則だけどね」

 

とだけ返事しておきました。

 

その夜、ファミリーLINEに不満がぶちまけられました。妹達にも聞いてほしいのでしょう。

 

「今日は一昨日と別の医者でした。今日の医者は、私のことを認知症だとは全く思わないと言いました。認知症の告知を本人にしないというルールはないそうです。私は一昨日の医者を全く信用していません。70過ぎのおじいさんで、私が具合が悪いと言っているのに様子を見ましょうと言うだけ。いつもそんな調子です。私が看護婦に3時間経っても熱が下がらないから何とかしてくれと言ったら、ようやく薬を出す始末です。来週、なぜ私を認知症だと診断したのか、聞いてみます」

 

うーん。私にとっては突っ込みどころ満載です。偉そうで上から目線の父にも腹が立ちます。70過ぎのおじいさんって、お前こそ77歳のヨボヨボじじいだろうと。なので淡々とLINEしました。

 

「お父さんが主治医を信頼していないのは何度も聞きました。そんなに嫌なら主治医変えたらどうですか。今日の先生の方が信頼できるなら、そちらを主治医だと思って割り切ったらどうですか。腎クリニックを変えるという手もありますよ」


「先生には言い方を気を付けてくださいね。『認知症と診断した』わけではありませんからね。診断するのは脳外科の仕事ですからね。お父さんは既に喧嘩腰になってますから、コミュニケーションには気を付けてください」

 

そこへ妹が「実は私、毎年脳ドッグ受けてるよ」というLINEくれたので、大盛り上がり!

「すごい!金持ちだけがやるものだと思ってた!」

「知り合いが40歳過ぎたら受けた方が良いって言うから」

「へー、すごいねぇ。でも高いんでしょ?」

「検査によって1~3万円するけど、会社が補助してくれるんだ」

「お父さんは透析受けてるから重度障害者医療証で無料なんだよね。いいなあ」

 

この辺で、多分、父の「脳外科を受ける」ハードルがガクンと下がったと思います。(妹、ナイスゥ!)


頃合いを見計らって追伸しました。(以下長文)

 

「お父さんは『3時間経っても熱が下がらないから何とかしてくれと言ったら、ようやく薬を出す始末です』と言うけれど、『薬を出すこと』が必ずしも正解じゃないから。

 

風ちゃんのことでずっといろんなドクターと付き合ってきたけど、こちらの言い方、伝え方次第で、ドクターの返事は変わるものです。

 

医師は患者の言うことを『はいはい』と聞く仕事ではありません。患者の状態を見て、最善のことをするお仕事です。

 

風ちゃんが発作を起こした時、作業所の人は『なんとかしてくれ』とせっついてきたけど、ドクターは『この発作は薬が足りないせいではありません。薬は増やしません』と言いました。

 

『それより発作を起こさない生活をしてください。生活習慣の改善が必要です』という返事でした。

 

そのような話をするには、こちらが落ち着いて話すこと。

 

単に『薬をくれ』と言わないこと。

 

『こういう状態なんですが、もっと楽になりませんか』と聞けば、ドクターはもっとわかりやすく、説明してくれるものです。

 

私だったら『3時間も熱が下がらない』と言われたって『たったの3時間で…せっかちな人だなあ』と思うし、『37.3度って高熱じゃないから、薬で下げるものでもないんだよな』と思うし、『この人は糖尿病の薬を何種類も飲んでるから、余計な処方はしたくないな』と考えて、それを総合的に『しばらく様子を見ましょう』と言うかもしれない。

 

付け加えるとしたら『明後日(次に病院に来る日)までに急激に熱が上がったり、もっと具合が悪くなったときは連絡してくださいね』くらいは言うかも。でも喧嘩腰の患者さんだったら、それさえ言う気が失せるかもね。

 

2日に1度、頻繁に来る患者さんなら、『しばらく様子見て』と言っても2日後には会うんでしょ?そういうこと、あるんじゃないかなぁ。」

 

父はぐうの音も出なかったようで(?)既読スルーでした。(まったく、文句があるときしか投稿しないんだから)

 

さてさて、そんなすったもんだがありましたが、とりあえず、娘の立場から(母を手伝うためにも)、1年3か月前に受けた脳外科の物忘れ外来の再診予約を取りました。診察券を見て電話したので、前回のドクターの予約がとれました。

 

父から「ありがとう」というLINEが来ました。


↓お参りして来ました。祈願すること多すぎw