重度障害者の次男、18才まで特別支援学校の歯科検診と、家族で診てもらっていた近所の歯科で定期健診を受けていました。でも体も力も大きくなって、看護婦さんと私だけで抑えきれなくなってきました。頭を押さえて口を開けさせるのも大変で、危なくないようにとがった器具は使わず、ミラーで目視して「虫歯はないですね」とチェックする程度でした。
それが学校を卒業して歯科検診受けられなくなって、コロナになって、マスクをしないし大声で騒ぐ子を歯科に連れて行くのははばかられるしで、2年ほど、歯科検診を受けていませんでした。
その間、グループホームに入所して、これまでの慣れていたヘルパーさんの手を離れ、職員さんがどの程度の歯磨きをしてくれているか不安でした。日中の作業所からは、コロナ禍の口腔ケアは差し控えさせてくださいと言われ、昼食後の歯磨きはなくなりました。
それから20才になり、コロナワクチン2回打って、近頃コロナは落ち着いてきたようだし、「今だ!」と思って、「障害者歯科あり」と大きな看板が出ている歯科へ行ってきました。特別支援学校のママさんたちも「障害者歯科ならあそこ」と言っていた所でした。送迎サービスもあるし、土日もやってるし、良いなぁ!と期待に胸を膨らませていました。
事前に「じっとしていられないので拘束ネットが必要だと思う」と伝えておいたので、個室に通され、イケメンドクターに笑顔で「ネットかけますね」とか言われながら、す巻きにされました。
ここまでは、次男もニコニコしていました。
「お、いけるか?さすが障害者歯科!」
と思ったのも束の間…。
耐えられたのは1分間だけでした。
3分も持ちませんでした😞
「口を開けてください。あーん」の辺りから「ん?これはなんだ?」と思ったんでしょうね。ネットを外すことに必死です。ベッドの足の方へズルズル降りていってしまい・・・。あえなく終了しました。
それでも、口の中に器具を入れて固定して、右から左までサッと目を通すことはできました。
「虫歯があります」
「えっ。あるんですか?生まれてから今まで、一度も虫歯になったことがなかったのに・・・」
「抜歯レベルの虫歯です」
「えっ!そんなに大きいんですか?」
「目で確認できたのは左の奥歯の虫歯ですが、レントゲンを撮ってみないと、詳しく分かりません。拘束ネットではこれ以上の検査は無理ですから、麻酔をかけての検査が必要です」
「全身麻酔ですか?」
「いえ、腕に点滴をして、麻酔を入れます」
「点滴・・・。この前、てんかん発作を起こしたときに、点滴で薬を入れようとしたんですが、あまりに暴れるので、脳外科の先生がギブアップしたんですよね・・・」
「それと当院での麻酔は自己負担となり、1回2万円になります」
「2万円?!1回につきですよね?検査して、削って、詰めて、毎回2万円ってことですか?!」
「はい。もし根っこの治療になったら、3回では済まないので、多い人で20~30万円かかることもあります」
「え・・・」
「それと…当院で対応できる障害者は、どちらかというと、ベッドにはおとなしく寝ていられるけれども、口の中に器具を入れるのが怖いから麻酔で治療しようという方で、このようにベッドに寝ること自体を拒否したり、降りようとしたり、ネットを取ろうとしたりして暴れる方は、向かないかもしれません・・・。障害者歯科というのを専門にやっている大学病院をご紹介します」
ここへ来れば大丈夫、最後の砦だ、と思っていただけに、びっくりしてしまいました。
ただの門に過ぎなかった。
障害者歯科の門戸を叩いただけ。
その日は保険診療で診察しただけなので、重度障害者医療証で無料でした。
家に帰って、口の中を見てみたら、なるほど、大きな虫歯がありました。歯茎から上が無くなっているような、酷い状態でした。なんで気づかなかったんだろう。グループホームに預けていたとはいえ、1~2か月に1度帰省して、私が歯磨きしていたのに。「虫歯はない」という思い込みがそうさせたのか。
大学病院、混んでるんだろうなぁ。遠いし、やだなぁ。
「この虫歯だけ大学病院で治療して、定期健診はここで受ける事、できますか?」
「レントゲンを撮らないと検診できないので、毎回2万円かかりますが、それでも良ければ」
うーん。良くないよねぇ。3か月ごとに2万円、そして虫歯が見つかったら治療の度に2万円だもんね。なんでそんなに高いんじゃー。(保険のきかない強い薬を使うかららしいです)
はー。
ゲームで次のステージに進んだ気分です。
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