この連載で紹介されて知ったホン・サンス監督。その作品『逃げる女』にも通じるところがある独特の雰囲気がある作品でした。


 

映画監督のビョンスは、インテリアの仕事をしてみたいという娘ジョンスを連れ、インテリアデザイナーとして活躍する友人ヘオクの元を訪れます。彼女が大家で4階建てのアパートは、地下がヘオクのアトリエで、他は貸し出され、1階がレストラン、2階が料理教室になっていて、ソニという女性が経営しています。レストランで食事をしワインを飲みながら父子とヘオクが語り合う中、ビョンスに仕事の連絡が入り中座して戻ってみると…

 

ヘオク、ソニ、そして4階のアトリエに暮らすジョンといった女性たちとビョンスの関わりが各階ごとに描かれていきます。ビョンスと相手との関係性が会話だけから浮かび上がってきて、飽きさせないのが見事だと思いました。ただ、シーンが変わると当たり前のように、二人の会話が始まるので、観ながらちょっと混乱してしまったのも事実です。監督の意図は分からないけれど、ビョンスがいるパラレルワールドのそれぞれの様子を垣間見ているようにも思えました。本当の彼はどこにいたのだろう?疑問に感じつつ、もしかしたらどのビョンスも本当なのか知れないとも思ったり。観た後の余韻を感じられる作品です。

 

シネマナビ!で印象に残った一言:

「映画でも舞台でも、しゃべっている人など、ある人物を共著する見せ方ってあるじゃないですか。この映画ではそういうことが一切ない。話を聞いている側が上の空っぽいな、なんていうこともわかる。だから、こっちは彼らの日常を傍観している感じがするんです。」

観る方が傍観者になっているー確かにそんな気持ちになりました。でも決して感情移入できないわけではないのが面白いなとも感じます。

 

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