全編緊迫感に満ちた、冷たい恐ろしさを感じる作品でした。

 

ジャーナリストのアルベールは日本人の小夜子と共に、ミナール財団の元会計係ラヴァルを拉致し郊外の廃墟に監禁します。アルベールは8歳の娘マリーを殺され、その犯人が財団関係者だと疑っているのです。鎖で自由を奪われトイレにも行かせてもらえないラヴァルは耐えきれなくなったのか、財団には児童福祉目的のサークルがあったが、その実態は子供たちの売買だったらしいと、その活動の黒幕ゲランが犯人ではないかと言い出すのです。ゲランも同様に拉致して残酷な仕打ちをするアルベールと小夜子。しかし二人の口から新たな証言が飛び出し、犯人捜しは混とんとしてきます。

 

小夜子はパリで心療内科医として働いており、娘の死のショックで精神を病んで病院を訪れたアルベールと出会ったことから彼を手助けするようになったようです。激高して時に我を忘れ暴走するアルベールを制しているようでいて、監禁した二人への容赦ない冷酷さが恐ろしい。小夜子を演じた表情を変えない柴崎さんの目力に圧倒されました。どこかに心を置き忘れてきたように見える空虚さも垣間見えて、一層恐ろしさが募ります。

 

理不尽にも見える犯人候補の拉致と監禁のなかで、ラヴァルを演じたマチュー・アマルリックの存在が少しほっとする雰囲気を醸し出していました。

 

物語の意外な展開にも振り回されます。復讐譚だけど、誰が誰を的にしているのか?結局悪いのは誰?という思いが心の中で渦巻いてきます。もしかして登場人物の誰かがサイコパスで、実はすべてはその妄想なのではないかなどとも考えてしまいました。

 

シネマナビ!で印象に残った一言:

「もうまさに、黒澤監督の世界。監督って湿度のある感じの絵作りをされますよね。それがサスペンス感を盛り上げている。廃墟はもちろんパリの街並みも、どこか不穏な空気を感じてしまいます。」

 

 

シネマナビ!の感想は:

〒104-8003 東京都中央区銀座3-13-10

株式会社マガジンハウス

anan編集部

シネマナビ!ご担当宛