ストーカー被害を訴えていた女子大生が相手の男に殺害される時間が発生。ところが被害届を受理するはずの地元警察の生活安全課が、その意慰安旅行に行っていたことが地元新聞に独占スクープされてしまいます。警察の広報課職員の泉は、同紙の記者である親友の千佳にうっかり自分が話したことから彼女が記事にしたので派と危惧を抱き、ひそかに調べ始めますが、ほどなく千佳は変死体で発見されます。事件を調べていた彼女は殺害されたのか?泉は上司の富樫とその動機で捜査一課係長の梶山に訴え、彼女を慕う生活安全課の磯川の協力を得て、独自に調査を始めます。

 

柚木裕子さんの小説は、読み出すと止められない牽引力があります。スピード感のある展開で、世の中で起きた問題を突き付けてくる。この作品も警察内部の問題かと思いきや、意外な方向に事件が展開し、ミステリとしても秀逸でした。

 

富樫を演じた安田顕さん、シネマナビ!で吾郎さんは年相応のシブいおじさんなのが見事と評されていますが、シブいだけでなくどこかにとぼけた感じが残るのが安田さんらしくて良かったです。演じている人自身の個性が役に反映されると吾郎さんもおっしゃっていたことがありますものね。だから吾郎さんは安田さんと同じ誕生日だからと言って、中年オヤジ臭はださなくていいんですよ~。梶山役の豊原功補さんも、いかにも現場を仕切る刑事という存在感に圧倒されました。個人的には、泉役の杉咲花さんは自分が抱いていたイメージと違っていたのが残念でした。小説を読むとどうしても自分のイメージができあがってしまうので、原作物って難しいなと思います。

 

時は春、川沿いを彩る満開の桜の風景が美しい。でも物語が進むに連れ、タイトルのサクラのもう1つの意味が明らかになっていく。実際に起こった事件を想起させ、社会問題についても考えさせられる作品でした。

 

シネマナビ!で印象に残った一言:

「話はどんどん意外な方向に進んでいきます。状況がどんどん変わっていくし、なんか雰囲気や音楽の載せ方もドラマっぽい感じで、スリリングなエンタメになっている。」

 

 

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