かつて祖母が暮らしていた地方の町に移り住んできた貴瑚と、母親に虐待されている少年の物語。その現在から過去を辿って貴瑚の歩んできた道が次第に明らかになっていくにつれ、哀しみが押し寄せてきます。胸に迫る作品でした。

 

貴瑚を演じた杉咲花さんの熱演ぶりもですが、彼女の安吾役の志尊淳さんの静かな演技も良かったです。個人的には、貴瑚の母親役の真飛聖さんに驚かされました。出演シーンは多くないけれど、覚悟のいる役だったと思います。舞台『多重露光』での真飛さんからは想像もつかない姿に、改めて素晴らしい俳優さんなんだなと思いました。出演シーンは多くないけれど、覚悟のいる役だったと思います。舞台『多重露光』での真飛さんからは想像もつかない姿に、改めて素晴らしい俳優さんなんだなと思いました。ラスト近くに登場する倍賞美津子さんの存在感も凄かった。

 

小説の映画化は基本「観るのが先」派でしたが、小説と映画は別物と思うようになってからは、あまり拘らなくなりました。ただこの作品は、原作を読んでいて自分の感じていたものと、映画が違っていました。小説ではタイトルである「52ヘルツのクジラ」というキーワードから、貴瑚たち登場人物の孤独感が自然に想像できて、言い方はよくないかもしれないけれど、ある種の明るさを感じたのです。映画ではそうした想像力を掻き立てるシーンがなくて、観るのを先にすれば、もっと素直に感動できたかもしれない。小説から受け取るメッセージって人それぞれなのだなと改めて思いました。

 

シネマナビ!で印象に残った一言:

「世の中にはいろんな人たちがいて、自分なんか感じたことのない苦しみを背負っている人がいる。その声をちゃんと聞き取っていきたいと思わせてくれる作品です。」

 

 

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