ネオノワールというキャッチフレーズ、そして予告編を見て、追われる主人公と謎のヒロインのラブストーリーをイメージしていたので、ちょっと意外な作品でした。

 

顔に傷を負い、誰かに追われている様子で身を隠す男の元に、煙草の火を貸してくれと現れた女性は、貴方の奥さんは来ない、私が代わりに来たと男に言う。謎めいた美女と逃亡犯、ノワール映画の典型のような始まりから、一転バイク窃盗団の内輪揉めシーンが展開します。男チョウは闘争の最中、誤って警官を射殺してしまい、警察に追われる身に。自分にかけられた身代金を妻に残したいチョウは、近づいてきた女性アイアイの助けを求めるのですが…

 

二転三転する展開と、息もつかせぬアクションを楽しむ映画でした。舞台となる鵞鳥湖が独特の雰囲気を持っていて、現実のどこにもない世界のように見えます。アイアイは鵞鳥湖で娼婦をしているのですが、白い幅広の帽子をかぶった水浴嬢が娼婦のシンボルというのも、湖での男女の交じりのシーンもどこか幻想的。監督はどこからこんな着想を得たのか知りたくなりました。

 

チョウを演じたフー・ゴーは、若い頃の江口洋介さんみたいな風貌で、とてもスマート。「格好良すぎて損をしている」と吾郎さんも評していますが、それだけに犯罪者のアクた悲哀が薄いのがちょっと残念でした。アクション映画としては主役がかっこいいのは正解なのでしょうけれど。アイアイ役のグイ・ルンメイは不思議な魅力を持った女優さん。ほっそりして全体に薄い印象なのに、そこはかとない色気を感じました。吾郎さんが絶賛したこの監督の前作「薄氷の殺人」、見逃しているんですよね。そちらでのファム・ファタールぶりも観てみたいです。

 

シネマナビ!で印象に残った一言:

「〝ユーモラスな気持ち悪さ″って、コーエン兄弟やデビッド・リンチにもあるじゃないですか。そこが癖になります。」

エグいシーンも突き抜けると笑えてしまうっていうのはよくわかります。私は見ていてタランティーノのアクションシーンを思い浮かべました。癖にはならないけど^^;

 

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