個人開設の診療所を医療法人化するには、大きくわけて次のようなステップになります。

1.医療法人設立認可申請
2.医療法人設立認可(認可書受け取り)
3.設立登記、登記完了届
4.診療所開設許可申請、診療所開設届、診療所廃止届
5.保険医療機関指定申請、同廃止申請
6.麻薬免許関係手続き
7.特掲診療料の施設基準に係る届出

このほかに、実施している診療内容により、結核医療機関や被爆者一般疾病医療機関等の保健所関係手続きや、生活保護法指定医療機関・同指定介護機関、自立支援医療機関等についても手続きが必要になる場合があります。

行政書士業務としては高額な報酬を設定できる分野です。
もちろん、それだけの作業量が必要ですが。

しかし、行政書士事務所のHPを探してみても、意外と取り扱っている事務所が少なく、報酬設定を公開していてもどこまでの分なのかわかりにくいところが多いと感じています。

普通に考えて、「医療法人設立」なら上記1~3までを含むべきだと思いますが、1の認可申請までの料金としているところが多いです。
認可されても設立登記しないと法人として成立しないのですけどね。

1~3までの相場としては、28~100万円程度の様ですが、案件により条件が大きく異なる部分があるので、やはり相談のうえ、方針を決めての見積りが必要だと思います。

高額な報酬を設定できるのは、競争が少ないことも一つの理由です。
建設業許可等の業務と比べ、対応する事務所が少ないので。
なぜ少ないかというと、特に難易度が高いとは思いませんが作業量が膨大なことは確かです。
また、認可後に個人診療所を法人診療所に切り替える手続き(上記4~7)を行う段階になって依頼者からあおられるのがイヤで取扱いをやめたという事務所も時々あります。

依頼者が心配するのは、診療報酬の支払いを受けられなくなる事態です。
通常、保険診療ですから、診療したときに現金で1~3割の収入が入りますが、残りの7~9割は翌月の決められた日までに保険請求し、入金されるのは更に翌月となります。
特掲診療料や結核医療の公費負担等についても同様で、ほぼ全て保険医療機関として指定を受け、発行される医療機関コードによって処理することになります。

診療所を法人化したときには、個人診療所で使っていた医療機関コードは使えなくなり、新しく保険医療機関の指定を受けて新しい医療機関コードを発行してもらうことが必要です。
ちなみに、指定申請してもすぐに新しい医療機関コードが発行されることはなく、通常翌月1日です。
例えば、11月1日に法人診療所を開設し、すぐに保険医療機関指定申請を行っても、新しい医療機関コードが発行されるのは12月1日になります。
11月1日から11月30日までの期間、有効な医療機関コードが無い状態となりますが、保険診療ができなくなるわけではありません。
保険医療機関の指定申請時に、法人診療所開設の11月1日に「遡及」して指定を受けられるように申請しておけば、12月1日に指定されたときに、「指定の期間:〇〇年11月1日から〇〇年10月31日まで」となります。

特掲診療料や結核医療の公費負担等も同様に個人診療所時代から継続して行っているものについては遡及可能ですが、新しい医療機関コードが発行されてからの切り替え手続きでさらに1か月程かかるので、1~2か月請求を待つことになります。
たとえ切り替え手続きが1か月遅れてしまっても請求できなくなることはありません。

依頼者(院長先生)のなかには、請求できなくなってしまうことをとても心配する方がいらっしゃいますが、大丈夫です。
ただし、手続きモレ等で1か月遅れになったりすると、入金されるのもその分遅れることになるので、当然注意すべきですが。

医療法人の設立認可申請の受け付けは、東京都・埼玉県は年2回、他県等は2~3回となっています。

申請準備には思いの外時間がかかる場合がありますので、法人化を検討されている方は、申請受付の半年ほど前から相談していただけると良いと思います。

→ 【医療法人設立サポート】行政書士増田法務事務所