櫻葉Story





前回のお話





-A side-





「仕事は・・・・・・」


「そんなの調節してもらったよ」


「うそ・・・・・・」


「俺を誰だと思ってるの?」




得意気に笑う、しょうちゃんを見て胸がキュっと鳴る。
俺の為に帰って来てくれたの?
そんなに俺の事が大事?



「熱は下がったかな」



首元に手が下りてくると同時に唇を奪われ、もう片方の手は腰に滑り込んだ。




「よし!下がってる」



なにその体温の調べ方!エロいんだよ。




「あ、そうだ雅紀。座薬入れたから」


「えぇ?!!」


「どうにもこうにも苦しそうだったから」


「えぇ?!うっそ・・・・どうやって?!!」


「どうやってって、こうしてうつ伏せにして、足開かせてズボっと。寝てて力抜けてたからスンナリ入ったよ」


「嘘でしょ・・・・・・」


「全く気が付かないなんて無防備過ぎるぞ危なっかしい」




やばい
今度は死ぬほど恥ずかしいんですけど!!
しょうちゃん普通に話してるけど結構してること大胆ですよね?!!




再現されてうつ伏せにした俺の体に乗っかりながら
しょうちゃんは耳元まで近付き囁いた。




「俺のが入るんだもん、もう何でも入るよな」



ねー素面だよねこのお方。
酒とか飲んで来てないよね?
いきなりこのテンションの時もあれば俺が顔を覗き込んだだけで顔を赤くする時もある、しょうちゃん。



どっちも好きなのには変わりないけど
たまにされる大胆行動には、まだ慣れない。




「ねぇ・・・・なんでちゃんと言ってくれなかったの?」




切ない吐息が耳を撫で、そのまま首筋に移動する。




「なんで?」



ウサギを退けて俺の横に寝転んだ、しょうちゃんは少し困った顔でジっと見つめてきた。




「だって・・・これぐらいで・・・・こんなことで・・・・しょうちゃんに甘えたくなかった」


「だからなんで?理由は?」


「理由?だって・・・そんな・・・・ただの風邪ぐらいで、しょうちゃんに頼ったり出来ないよ・・・・」


「ふーん」


「しょうちゃん忙しいんだから、いちいちこんな事で俺にかまってなんかいられないでしょ」


「おまえはまだ分かんないんだな」




しょうちゃんに小さく溜息をつかれれば悲しくなる。




「迷惑はかけたくないよ」



小さく言うと、しょうちゃんは呆れたように眉を下げ
俺の頬の上で指は優しく何かを拭き取るように左右に動いた。




「泣き虫」



無意識に溢れ出していた涙に気が付き俺は慌てて顔を隠すように両手で覆うけど
しょうちゃんは強引に引き剥がしキスをしてくる。




「うつっちゃう・・・・・から・・・・・」



しょうちゃんの胸を押しても今の俺の力なんか無抵抗と同じ。
それに、本当はして貰いたかったから嬉しくて力なんか入らない。




「おまえに頼りにされて甘えられるのも、我儘言われるのも凄く嬉しいんだけどな」


「しょうちゃん・・・・・・」




こんなに大きな目をしてるのに
しょうちゃんの瞳には俺の居場所しかないんだね。




「特別な奴には何言われても嬉しいの。迷惑かもなんて思われる方が迷惑だね」




俺しか入れないんだ。
俺でいっぱいなんだ。
飛び上がるほど嬉しいセリフを言われちゃうと今の状況を作ってくれた風邪菌にも感謝だよ。




「雅紀限定」




そこまで言ってくれるなら
心の奥底にある我儘もお言葉に甘えて出しちゃおうかな。なんて図々しく思ったりもして。




「俺には甘えて?我儘も言って。我慢なんかしないで何でも言えよ。俺に言わないで誰に言うの?」


「しょうちゃん」


「甘えられたいんだよ」




いつも俺ばっかりが寄りかかっている。
しょうちゃんとは全然対等にはいかなくて、罪悪感にも似た何かがずっと胸にあって・・・・・




「俺ばっか甘えてる」


「俺だっておまえに甘えてるよ」


「しょうちゃんは甘えてないでしょ」


「そう感じるのはおまえの心が広いからだよ」


「え?」


「甘えてるのに、その事を感じない包容力」




しょうちゃんは笑いながら
ウサギの抱き枕を引っ張りあげ自分の前に置くと





「だから甘えてよ。今は何して欲しい?」




いつもより高い声でフザケタ様に言って
ウサギの長い手をパタパタさせた。





「言わないと帰るよ?」


「やだ・・・・・・・」


「俺も嫌だから言って?」




伸びてくる手が優しく汗で濡れた前髪を撫でる。





潤んだ瞳で優しく聞いてくる、しょうちゃんを見たら
我慢してた言葉が喉を引き裂いて飛び出そうとしてきた。




いつもいつも俺が望む事はただ1つ。






「しょうちゃん」





1㎜の隙間だっていらない
風邪を引いてる今だって・・・・・・
こんな時にだって、しょうちゃんが欲しくて堪らない。





2人きりになれば必ず思う。
1つになりたい。





「ん?なに?」




俺の我儘が嬉しいの?
俺の言うことは何でも聞いてくれるの?




引かないで、ちゃんと聞いてくれるの?






「なんでも言っていいよ」



「ほんとに?」



「ほんとに」





しょうちゃんの言葉を信じて言ってみようかな
もう・・・・座薬まで入れられちゃったんだ・・・・・
恥ずかしいもなにもないよ・・・・・・




いや、すげぇ恥ずかしいけど・・・・・・・
我慢出来ない。





「しょうちゃん・・・・お願いしてもいいの?」


「ドンとこい!!」




わざとらしく胸を叩く、しょうちゃんに気持ちを打ち明けた。




「しょうちゃんと・・・したい・・・・・そしたら治る」




ほら。その顔・・・・・やっぱり呆れてる?そう思ったのも束の間
しょうちゃんは俺を抱き寄せると




「いいの?」


「え・・・・・・・」


「風邪引いた雅紀も色っぽい」


「はずい」


「やったね」


「でも・・・・ちゅーはなしね」


「なんで?」


「うつっちゃうから・・・・・・」


「いまさら?」




自分から誘ったくせに物凄く恥ずかしくて、しょうちゃんの顔が見れない





「ちゅうしなきゃイけないくせに?」




目を逸らす俺の顔を覗き込み
再び熱が上がる体を抱き締めてくれる、しょうちゃんは
やっぱり物凄くいい匂いがして




「早く・・・・・したい・・・・・・」




俺を大胆にさせた。




「嬉しい。でもその前におかゆ食べて薬飲まないと」


「うん」


「辛くなったらすぐ止めるよ?」


「わかった・・・・・」




口ではYesの返事をするのに
おかゆを作りにキッチンに戻ろうとする、しょうちゃんの手を
俺はいつまでも離せず




「おかゆ・・・・あとで・・・・・」


「だめ」


「お願い・・・・・」




断られたわけでもないのに泣きそうになり熱くなる目頭に
しょうちゃんは何度もキスをくれた。