櫻葉❤
ご理解ある方のみおすすみください☆
はじめましての方へ→ こちらへ
**************************************************:
Side S
真夏のもうすぐお昼になる時間。
雅紀の家の最寄り駅で待ち合わせて俺は、
はじめて雅紀の地元に来た。
「おじゃましまーす」
玄関に入ると一応そう言って声をかけるが、
雅紀の両親はどちらも仕事でいないことはしている。
「どーぞ」
「おぅ」
夕方の5時を回るころに母親が帰ってくると聞いているから
それまでは二人きりだ。
なぜかそんなことを改めて思ってまた、俺の中のどっかがトクトクした。
持たされた手土産を渡して、簡単な一泊セットを雅紀の部屋に置かせてもらうと
昼飯は雅紀が焼きそばを作るという。
「すげーな」
「ただの焼きそばだよ?」
「俺はつくれねぇ」
野菜とお肉を切って焼いて混ぜればいいだけだよと笑う雅紀に、
本気ですごいと思って自分が恥ずかしくなる。
キッチンのテーブルに腰かけると
エプロンをせずに料理をしだした雅紀の後ろ姿を見つめる。
「ゲームしてていいのに」
「いいよ。別に」
出してもらった麦茶をゴクリと飲んで、
「手伝えなくてわりぃ」
ぼそりと言った。
ぶっちゃけ、俺はいままで料理なんてしたことはなくて、
包丁なんて持ったことがない。
「カレーは?」
「え?」
「カレーも作れない?」
返事に詰まる俺に、雅紀は決して嫌味なく笑った。
「なんかかっこいいね」
「は?どこがだよ」
カッコいいのは雅紀の方だ。
「ザ・男って感じ」
「バカ言うな。今どきは料理できる男の方がモテんだぞ」
「え~そうなの?」
器用に手を動かしながら話す雅紀の背中を見つめながら、
初めて会った日に開いてた雅紀の英語の参考書を思い出す。
雅紀に気づかれないくらいの小さなため息をつく。
すべてが雅紀の方がオトナだ、、、と思った。