櫻葉❤
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Side S
暑い夏。
去年と同じく、ほとんど毎日サッカーをする夏。
去年と違って、ほとんど毎日予備校に通う夏。
「じゃあな」
「ん。また明日ね翔ちゃん」
ドロドロに汗をかいた部活のあと、ニノと別れて向かう先は雅紀のいる予備校だ。
たった独りで受けていた英語の授業は毎回、雅紀と席を並べて受けるようになって、
お盆が過ぎた夏休み後半には
ときどきダチと一緒に出かけるプールやゲーセンやバッティングセンターに
ときどき雅紀とも行くようになった。
一応、センター試験を予定してる俺は5教科すべての授業を取っていて
雅紀は英語だけ、別々の内容のヤツを4つも取っていることがわかって
そうして、
いまは互いに通う学校名も知っている。
雅紀は俺より少し偏差値の高い高校に通ってた。
そこまで自分の通う学校と差がなかったことに、情けないことに正直ほっとしていた。
けれどそれ以上のコト、
たとえば予備校に通ってる理由や互いのいまの偏差値なんかのことは
話題にしたことはなかった。
俺からそういう話題を振らないのは、
自分からふってしまったら自分もその理由を話さなきゃいけなくなると思うから。
いまだ俺は自分のなりたいものについて、
誰かに話す気持ちにはなれない。
だって、いまだにそこまで成績が追いついていないのだ。
そんなことは恥ずかしくて到底、言葉にする勇気は持てない。
そうして、いまのところ雅紀からもそういったことを聞かれたことがないし、
雅紀自身のことも話してもらったことはない。
「しょうちゃん明日って授業ないよね」
真夏の午後の4時半なんて外はただ暑くて、
予備校の自動ドアを出るととたん、一気に全身に汗が噴き出る。
今日は午後から数学の授業のあとの時間、雅紀の英語の授業があって、
その間の90分を自習室で勉強をしてた。
、、、決して授業の終わる雅紀を待ってたってわけじゃない、、、ってのは確実に、、、
嘘だけど。
二人の授業がある日はいつも、それが別々の授業でも、
どちらかが自習室で待って、
時間を合わせて帰宅するのが当たり前になっていた。