大宮☆
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Ｓｉｄｅ N
俺にとって
花の声が聴こえることは
物心ついたときから当たり前のことだった。
というより、、、
子供のころは本当はみんな聞こえてるんだ。
それなのに、、、、
だんだん
聴こえなくなる。
みんな。
そして、
聴こえてたことすら忘れてしまう。
なぜなのかは知らない。
ただそれがとても不思議で
とても悲しかった。
どうして自分だけが聴こえたままなのか。
その理由はわからない。
まぁそんなことはもうどうでもいい。
実際、自分は聞こえて
周りは聞こえない。
ただそれだけのことだから。
「俺もさ、、、なんだか昔は聞こえてた気がするんだよね」
「、、、え？」
ふふっと笑って
大野さんは言った。
、、、やっぱりこの人は、、、
自分にとってこの人は
なにか特別な相手。
、、、どうしてだろう、、、
どうしてそんな気持ちになるのかわからない。
、、、花の声がどうして聞こえるのか
わからないのと同じように。
ーー・・・・・・・・・・
「じゃ、行こうか」
店を出たところで
大野さんが言う。
「、、、行くってどこへ？」
「俺んち」
「え？」
そんなに身長の変わらない大野さんを
なんだろ、、、
なんとなく
見上げているような気分になった。
「、、、なんで」
「ww わかってるくせに」
「、、、、、」
理由は、、、もうわかってるでしょ？
大野さんの目が
そう言ってる。
ドクドク
身体が
ドクドクいってる。
「明日は休みでしょ？」
ふふっと
笑いながら
大野さんが言って
こちらに手を伸ばす。
大野さんの手、、、
今日の撮影でも思ってた。
すごくキレイだなって、、、
あの手に
触ってみたいって、、、
「、、、、、」
差し出された手のひらに
大きくはない自分の手のひらを預けた。
見つめればそこには
今までとは違う目をした男がいる。
「やっと始められる」
「、、、うん」
どうして花の声が聴こえるのか
自分のことなのにわからない。
そして
【やっとはじめられる】
、、、うん、、、そうだ。
だって俺は待ってたんだ
ずっと
この人を
待ってた、、、
どうしてそんな風に思うのかも
自分のことなのにわからない。
ただ
「待たせてごめんね」
「、、、うん」
そうすることが当たり前みたいに
大野さんに抱きつけば
ふわっと
あの甘い香りに包まれて
大野さんも抱きしめ返してくれた。
真昼の花スピンオフ～二人の始まり～
Fin.