新しい家に飾る絵がほしいと、祖父に電話をかけた。


祖父は以前から絵画や、焼き物や、掛け軸などを収集していて、

とても広く古い一軒家に、それらのものを置いているのだ。


もう何年も前に亡くなられた有名な小説家のことを祖父は敬愛しており、

その方は絵もかかれていて、一度個展に伺った。


祖父と親交のある奥様とその時初めてお会いし、

国立でゆっくりとした時間を過ごした記憶がある。


私の世代では決して関わることのない、そんな偶然的な出逢いだったけど、

その後また、奥様が本を出版されたときに再会し、

夫の大ファンである祖父の単なる孫である私のことを覚えてくださっており、

その聡明さと、穏やかでたおやかな振舞いに、私も敬意を抱かないではいられなかった。


その奥様が3月に亡くなられたそうだ。

祖父母も10日ほど前に新聞で知ったという。


2度しかお会いしたことのない、友人でも、親戚でもない、私とは50歳以上も年の離れた治子さん。

ほんの少しの関係だったけれど、治子さんとお会いできて嬉しかったです。


大好きな祖父と祖母が愛した絵と、きっともっともっと治子さんが愛した絵を、

私の部屋に飾りたいと思います。