「ねぇ理佐は明日の予定入ってる?」
「えー...無いよ。面倒くさいもん。」
大学で一番仲の良い小林由依が急に聞いてきた。
今日は12月24日、クリスマスイヴだ。ここで言う明日とは,完全にクリスマスのことである。
街はイルミネーションでキラキラと彩られ、それをカップル達は歩きながらじっくりと眺めている。そんな中私たちはグイグイと歩を進める。
「えーー、なにそれ。たまには実家帰ってみれば?結局お盆も帰らなかったんでしょ?」
「...うーーん...そうだけど...。あっ、私こっちだから、またねー!」
「うんまたね。」
由依に言った通り、明日の予定は無しだ。つまり「クリぼっち」である。言い訳をするようで悪いが、実はお誘いを貰ってはいた。だが何となく気分が乗らず、全て断ってしまった。由依には面倒くさいと言ったが興味が無い訳では無い。昔は恋だってした。いや、今もしているのかもしれない。忘れられない人がいるのだ。
『理佐、またね。』
あの人は最後にそう言って去っていった。
あの時の声と表情をいつまでも忘れられない。
「.....てち。」
今でも愛しく思う彼女の名前を呟くと、私は自然とLINEを開いていた。スクロールして一番下にある〝メンバーがいません〟という文字をタップする。
『さっきはごめんね。』
『私も理佐のこと好きだよ。ーーーー』
随分前のやり取りではあるが私にはこのLINEが、昨日のことのように思える。あの日からもうかなりの時間が経ち、今は大学生活2回目の冬を迎えている。あの日からてちとは一度も会えていない。もちろん連絡も無い。
当時このLINEが送られてきたときの気持ちと同じような気持ちを抱きながら、私は一文一文をゆっくり読んだ。
『もし私が夢を叶えていつか再会できた時、
お互いに気持ちを忘れてなかったら、
今度は私の口から告白させて欲しい。』
こう書いてくれたが、そもそも彼女は私に会う気などなかったのだ。その気があれば今もLINEが続いていたかもしれない。だがてちは、このLINEを送ってくれた翌日にトークルームを退出していた。
それに気づいた時は「なぜ...?」という疑問を抱いたと同時に、想いを伝えた私と別れを告げたてちの関係は、恋人とは言えず、友達とも言えず、ただ電波で繋がっているだけの関係になっていたことに気づき、絶望した。
「はぁ...もうやめよ...。」
私はそう呟き前を向くと「ドンッ」と勢いよく誰かにぶつかってしまった。いけない、歩きスマホなんてするから...。
「す、すみません...!」
「あ、大丈夫です。こち...ら、こ...そ...。」
「.......!」
「.......。」
目の前の人はとても驚いた表情をしてこちらを見ている。私も一緒だ。
「.....てち...?」
「...........久しぶり。」
会話が止まる。ずっと会いたかった人がすぐ目の前にいるというのに、私は彼女の名前を口にするのが精一杯だった。数年ぶりに見た彼女は、以前より大人びた顔をしていたがすぐ気づいた、この人は「平手友梨奈」だ、と。
「.....え、っと...こっち、来てたんだね。」
「.....あー...、ちょっと用事があってね。」
「用事ってなに?恋人がいるの?」
そう言ってしまいたい気持ちをグッと堪え、必死に話題を作る、が、
「...あ、じゃあ...私、帰るね。」
「...。」
彼女は話を切り上げ、そう言ってしまった。時間も時間なのだから当然である。
「...理佐、またね。」
「.....!」
『理佐、またね。』
ぎゅっ...
懐かしく、そしてとても苦い記憶のあるその言葉を聞いて、私は反射的にてちの腕を掴んでしまった。
その場が沈黙する。
そしてその沈黙を破ったのは、てちだ。
「...ねぇ、理佐。」
「...な、なに?」
「メリークリスマス。」
「え。あ、?え、あっ、メリークリスマス!」
スマホを見るとちょうど0:00、日付が変わったのだ。動揺しながら返答する私を見て、てちは「ふふっ」も笑みを零した。それを見た私も思わず頬がにやけてしまった。
「理佐。」
「...なに?」
「今から理佐の家行ってもいい?」
「....?.......っ!!?!??!、?!!?」