◆Summertime Lesson◇
激しく鬱!
海!
プール!
夏祭り!
花火!
出会いと恋がいっぺんにやってくる夏休み!
「神谷。お前、夏休み補習決定」
ってちょっと待って下さいッ!
全開に開いた教室の窓から、真っ青な空。
時折風に揺れる真っ白なカーテンを突き抜けて、強烈な太陽が机に熱を注ぐ。
眩しい日差し!
太陽の光でキラキラ光る波!
夜はお祭りに花火!
彼氏なんかもできたりしちゃってぇー。
ぎゃー!!!
待ってました!
な つ や す み !
なんて、超ハイテンションで、夏休みを心待ちにしといた時でした。
夏休みまで残り1週間をきったある日のこと。
薄暗い放課後の職員室。
「神谷。お前、夏休み補習決定」
真っ赤な×がひときわ目立つ"神谷くるみ"と書かれた答案用紙にため息をつきながら、そう言ったのは担任で数学担当の黒沢。
「ってええぇぇぇ?!」
「えーじゃねぇよ。ほ・しゅ・う!」
ちょッ!待って!
あたしの夏休みはッ?!
こないだ買ったビキニは?!
どうなっちゃうの?!
突然降りかかった不幸に開いた口が塞がらないあたしをそのままに、黒沢は真っ赤な×だらけの答案用紙を人差し指で弾きながら煙草に火をつけた。
「…お前、これじゃ進級もやばいぞ。マジ」
真っ白なたばこの煙答案用紙に吹きかけながらそう言うと、黒沢はあたしに答案を差し出す。
ちょっと待って。
マジで意味がわからないんですが。
確かに数学は中学の時から…いや、小学校の算数の時点で苦手だった。
でもそれよりも、今苦手なのがこの人。
そう、担任・黒沢亮司。
威圧的な目に、冷たい口ぶり。
授業中でも、休み時間でも、冗談なんて言うはずもなく。
動物に喩えるなら、サバンナを牛耳るライオン。
笑った顔なんて見たことない。
学校の女子は、
「たまに見える八重歯が可愛い~」
とか言うけれど、あたしには牙にしか見えないし、
「超クールー!」
と言われている切れ長の鋭い目もただ怖いだけ。
「土日、盆は休み。あとは毎日。わかった?」
「ふぁい…」
涙と一緒に現実をのみ込んで、こうして夢も希望もないあたしの夏休みが始まったわけです。