『死神の精度』 伊坂幸太郎さん著

前回のおすすめ小説は『ヘブン』でしたが、今回は
『死神』(笑) といっても不吉な物語ではなく、
むしろ不思議と心あたたまる物語なのです(^^*

主人公の『死神』がある人物について7日間の調査した後
報告結果を『可』とすると、その人物は翌日の8日目に
亡くなります。ほとんどの場合は『可』ですが、
ごくごく稀に『見送り』として、死を免れることもあります。

調査時の死神の様子ですが、
その1.その時々の担当の人物に近い、もしくは親しみ
やすい姿で現れる。(担当が若い女性の時は、男性モデル
のような容姿に、担当が裏の世界の人物の時は、
同業者っぽい容姿に。)

その2.名前が町や市の名前である。
(主人公の名前は『千葉』)

その3.『ミュージック』をこよなく愛すため、仕事の
合間はCDショップの視聴コーナーに入り浸り。
(視聴の合間に仕事をするというウワサも(笑))

その4.素手で人間に触れてはいけない。
(触れた人間は気絶し、寿命が一年縮むため。)

その5.これは千葉限定ルールのようですが、仕事をする
時はいつも雨。(その話を聞いた担当の女性が「雨男
なんですね。」と言ったら、「雪男というのもそれか」
と聞き返すあたりが本書のユーモアどころなのです。

他にも、「わたし醜いんです」という女性に対し、
『いや、見やすい。』『見にくくはない』と答えたり、

千葉『かたおもい、というやつか』
男性「千葉さん、よく真面目な顔でそんなこと言えますね」
千葉『恥ずかしい言葉なのかこれは』
男性「いい大人が口にするのには度胸が」
千葉『悪い大人ならいいというわけか』

などなど。
千葉は『死』を扱うだけに、徹底してクールですが、
人間の言葉を熟知していないため、言葉のレトリックが
理解できず、こうした受け答えの噛み合わなさやズレが
奇妙に和むというか(笑)笑いのツボなのです(^^

6編の物語が収録された本書。表題作の第1話は、この春
映画としても公開されます。このお話もよかったですが、
意外にも、普段は怖くて全く読めない裏社会を舞台にした
第2話『死神と藤田』がいちばんじ~んときちゃいました。
う~ん。こんな死神なら会ってみたい!?σ(^^;