この電話で、みんなの運命が交錯する・・・・・

貴方のその想いはもう、届くことはなくなるのだろうか・・・・・・


ange 【ボクだけのdiva】 vo.23 ~troubleⅤ~


〈キョーコside〉


その日、撮影の合間に携帯を確認すると、留守電が入っていた。

何だろう、と思い内容を確認すると・・・・・


「祥子です。キョーコちゃんに大事な話があるの。
誰にも聞かれたらまずいから、どこかで二人だけで話が出来ないかしら。
連絡待ってるわね・・・・。」


という内容だった。


私は、すぐにこの前のショータローの様子を思い出し、もしかして何か大変な事になっているんじゃないかと気が気じゃなかった。


すぐに祥子さんに連絡をとると、今日の夜にだるまやで話をすることになった。



*




仕事帰りに待ち合わせをして、一緒にだるまやへ行った。


店の奥の個室に入り、二人だけになったとこで、私から話し出した。


「・・・・祥子さん、大事な話って、ショーの事ですよね!?
・・・・・あいつ、どうしたんですか??」


祥子さんは、苦笑をしながら話し出した。


「キョーコちゃんだから、言うわね・・・・。
秘密にしとおいて欲しいんだけど、実はこの前電話を貰った次の日に、病院で診てもらったの。
・・・・そうしたら・・・・・・」


最後の方で祥子さんは俯いてしまっていた。


「・・・・・・そうしたら・・・・・?」


ゴクリ、と喉をならし、祥子さんの一言を待つ。


「・・・・・・声帯に、ポリープが出来ているらしいの・・・・・」


「・・・・・えっ!?」


ポリープって、できもの、のことよね!?


「まだ、大きくないし、話し声にも歌声にも、支障はないの。
でも、先生の話だと、これから大きくなってくるかもしれないから、取っておいたほうがいいって言われたの。
でも・・・・・
もうすぐ、コンサートツアーが始まるから、今はどうしようもできないって尚は言い出して・・・・・」


・・・・・祥子さんの声が、微かに掠れてきた。


「・・・・・祥子さん・・・・」


「・・・・尚の考えも、わかるのよ!?でも・・・・・
自分の体を、もっと大事にして欲しいのっ!!!!
私は、私は・・・・・・」

泣き出してしまった祥子さんに、私はハンカチを渡し、落ち着くまでしばらく待っていた。


「・・・・・・キョーコちゃん・・・・
お願いがあるの・・・・。」


泣き止んだ祥子さんは、そう言うと、私の両手をしっかり掴んでこう言った。


「尚に、ポリープを取ることを勧めてくれないかしら。
・・・・・私が何度言っても、全く聞き入れてくれないの・・・・・。
早くしないとツアーも始まってしまうから、説得できれば何とかツアー延期も間に合うかもしれないし・・・・。
キョーコちゃん、お願いっ!!!!」


「・・・・私が言ったところで、聞いてくれるかどうか、わかりませんよ!?
それに、私、ポリープができるとどうなるとか、よくわからないのですが、取らないとダメなんでしょうか?」


「・・・・今はまだ小さくて支障はないけど、大きくなると、声が出なくなってしまうの。
そうなったら手術して取るしかなくなるのよ。
声も、元通り戻るかもわからないし・・・・。
小さいうちは本当は、通院でも治るらしいんだけど、尚は嫌がってね。
・・・・・・不破尚のイメージじゃないって・・・・・」


「・・・・・・あの、馬鹿っ!!!!」


イメージとか、今は関係ないんじゃないの!?
・・・・・・歌えなくなったら、どうするつもりなのよっ・・・・・

あんなにも――――――
歌手になるのが夢で、毎日頑張ってきていたのに・・・・・・


「・・・・・・わかりました・・・・」


「!!!キョーコちゃん、いいのっ!?」


「・・・・・私が言ったところで聞く耳を持つとは思えませんが、言ってみます。
・・・・・・私がアイツを蹴落とすつもりなのに、勝手に一人で落ちていったら困りますから・・・・・。」


「・・・・・・ありがとう、キョーコちゃん・・・・・。」


祥子さんとお互いのスケジュールを確認すると、明日の午前に少し時間がありそうだから、ドラマ撮影の前に、アイツの楽屋に行くことになった。


でも・・・・・
何て言えば、アイツは手術をするのだろう・・・・。

今晩は、あまり眠れなかった・・・・・・。





*





次の日、私は祥子さんに教えてもらった、今日ショータローが収録があるという局に来ていた。

楽屋もすぐに見つかり、意を決してノックをした。



コンコンコンッ


「・・・・・はいっ。あっ・・・・キョーコちゃん。(待ってたわよ)」


「・・・・・祥子さん、今いいですか!?」


「も、もちろんよっ!!!入ってっ。」


祥子さんが大きく扉を開いてくれたので、中に入ると・・・・・

ショータローは椅子に座ったまま、こちらを呆然と見ていた。


「・・・・・・ショータロー・・・・・」



「・・・・・・何しに来やがった・・・・」


いつも以上に不機嫌そうな、とても目つきの鋭いような睨みつけるような顔をしながら言ってきた。

すぐに目線が外れたら・・・・・


「・・・・・・祥子さん・・・・・コイツに言ったんだなっ!!!」


「尚っ!!!!!それは尚のために・・・・・」


ドンッ、と隣にある壁を叩き、


「コイツにだけは、キョーコにだけは、知られたくなかったんだよっ!!!!!」


「・・・・・・尚・・・」


怒鳴った後、顔を臥せ見せようともしないアイツに近寄り、ムラグラを掴んだ。


「ちょっとっ!!!!
祥子さんを怒るのは違うんじゃないのっ!?
アンタの心配をして、それで私のところに来てくれたのにっ!!!!!」


「・・・・・笑いにきたんだろう!?
・・・・・自業自得だ、って・・・・・」


ふっと自嘲気味に笑いながらこう言われたのだが、全く予想だにしていなかった言葉にビックリして、掴んでいた手を離し、問い掛けた。


「・・・・・どうして、そう、思う、の・・・・・!?」


「・・・・オレのこと、憎いんだろう!?
・・・・15で半分騙したように京都から一緒に家出したのに、売れてきたら家政婦呼ばわりして捨てたんだからな・・・・・・。」


「!!!!確かに、今でも許せないし、憎いわよっ!!!!!
でも、こんなときに笑うほど、私人間出来てない奴じゃないわっ!!!!!」


「・・・・・・」


じっと私の顔を見つめてくるアイツの表情はなく、何かを言いたそうにしているのだが、言葉がでないようだった。


「・・・・・歌手になるのが、昔からアンタの夢だったんじゃない。
手術すれば治るのなら、すぐに治せばいいのに、どうして嫌がるのっ!?」


「・・・・じゃあお前は、仕事があるのに、放り投げることが出来るのか!?」


「・・・・・出来ないけど、今回のケースは病気なんだから治療しないと・・・・・」


「同じだっ!!!!
・・・・・・オレにとっては同じなんだよ・・・・・
ポリープができたって言ったって、まだ歌えるんだ。
・・・・・・大勢のファンが、オレの歌を待っていてくれてる。
色んなスタッフが、前から準備をしてくれてる。
・・・・・オレ一人の都合だけで、延期になんてしたくないんだ。」


「・・・・・・ショー」

「(グスンッ)尚・・・・・」


「今回のツアーは、必ず成功させるっ!!!!
だから、終わるまでは待っててくれないか!?
・・・・・・終わったら、手術だろうが何だろうが、ちゃんとやるから・・・・・・、な!?」


ショータローの目線の先には、私と、後ろにいる祥子さん。

きっと私達二人に言ったんだと思った。


「・・・・・わかったわ。
でも、ツアーは必ず成功させるのよっ!!!
・・・・・そして、終わったらすぐに手術をうけることっ!!!!!
いいわねっ!?」


「・・・・・わかってる。
オレがやるって言ったら出来るんだよ。
なんてったって、オレは不破 尚なんだからなっ!!!」


ニヤッと笑うショータローを見て、そういえば昔からこんなやつだったなぁ、と少し呆れていたら・・・・


「(グスンッ)・・・・・ホントに、大丈夫なの・・・・??」


涙声の祥子さんがショーに問い掛ける。


「・・・・・大丈夫だ、きっと。」


チラッと私のほうを見て・・・・


「・・・・・・キョーコが、オレの側に居てくれれば・・・・・・」


―――――――えっ・・・・・!?


「・・・・・ずっと、後悔していた。
・・・・・キョーコを手放してしまったこと。
お前が、オレの側で笑っていてくれるだけでよかったのに、いつの間にかそんな大事な事を忘れちまって・・・・・。
今更こんな事を言うのは図々しいとは思ってる。
でも―――――――
側に居てほしい・・・・・。
例え、手術が無事終わるまででもいいから・・・・・。
オレには、キョーコが必要なんだ。
―――――――頼む、キョーコ・・・・・・。」


言い切ると、深々と礼をした。

・・・・・信じられなかった。
だって、今までショータローが私に謝ることなんて、一度もなかったのに・・・・。

戸惑って固まっていると、いつの間にか、祥子さんもショータローの隣に来て、


「キョーコちゃんっ!!!!
私からもお願いするわっ!!!!!
尚の側に居てあげてっ!!!!
実は、病院に行った後からずっとふさぎ込んでいて、私じゃどうしようもなかったの・・・・・。
キョーコちゃんが居てくれたら、きっと尚も無事にツアーを乗り越えられる気がするの・・・・・・。
お願いっ!!!!!」


と言って、これまた深々と礼をされてしまった。

だって、無理よ・・・・・。
私はもう、昔の私じゃないのよ!?

――――――ショータローだけを、献身的に愛していた頃の私じゃないのに・・・・・。


「・・・・・・無理よ、そんなの・・・・・・」


二人はほぼ同時に顔を上げ、驚いていた。


「だって・・・・・・昔の私じゃ、ないの、よ・・・・!?
アンタを、好き、だった・・・わた、し、は・・・・も、う・・・・・・い、なぃ・・・・・・・」


言い終わると同時に、グイッとショータローに引っ張られ、抱きしめられた。


「・・・・・・何も、昔のお前に戻れ、なんて言ってねーよっ。
今の、最上キョーコがいいんだよっ。
・・・・・ちゃんと、自分の意見を言える、対等なお前がいい・・・・。
・・・・・・・だから、もう泣くなっ。」


ポンポンッと背中を叩いてあやしてくれた。
今まで、私が泣いたら固まってたのに・・・・
なんか可笑しくて


「・・・・ウフフッ。」


「!!!な、何笑ってんだよっ!!!!」


ちょっと顔をおこして、ショーの顔を見ながら


「いや、だって・・・・・。
私が泣いてるといつも固まってたのに、今日はあやしてくれたからおかしいなって思ったら、自然に笑っちゃったのよ・・・・。」


「!!!」


顔を真っ赤にして何も言えなくなってしまったショーを見て、


「・・・・・・照れてるの!?」


ニヤッと笑いながら言ったら


「!!!!!て、照れてなんかいねーーーーーよっ!!!!!」


と、益々真っ赤になってしまった。

しばらくクスクスと笑っていたら・・・・・


「・・・・・とりあえず、キョーコの飯、食いたいな~~~~~。
お前の作ったのが、一番上手いからなっ。」


まだ真っ赤になってると思ってたから、ビックリしてショーを見たら、顔が目の前にあって、もっとビックリした。
―――――まだ、抱きしめられてたんだった。


「~~~~~~っ!!!!いつまで抱きしめてるのよっ!!!!!!」


「・・・・・飯、作りに来てくれるなら離してやるよっ。」



「~~~~っ!!!!も、もうわかったからっ!!!!飯だろうがなんだろうが作りに行くから、

は~な~し~~てぇぇぇぇぇぇぇ~~~~っ!!!!!!!!!」



パッと離されたのだが・・・・・・



「・・・・・うるせぇ~よ、相変わらず、色気もへったくれもねぇなぁ・・・・・・」



とショータローがぼやいていたのは、聞こえていなかった。


だって、私の胸はとてもバクバクしていて、顔に体中の血が集まっていたかのように・・・・

顔が真っ赤になっていた。




結局、その晩から私は、ショータローの家に・・・・・・

ご飯を作りに行くことになってしまった。



それが・・・・・・・・・


私の運命を狂わせてしまうとは知らずに・・・・・・・・・・・








vo.24



(今回の、ショーちゃんとキョーコの掛け合いは

書いててとっても楽しかったですっ!!!

ショーちゃん、書きやすい。)