この一週間で覚えたものは………
日本語と、日本人の性格と、俳優敦賀 蓮のことだけだった…………
ange 【ボクだけのdiva】 vo.3 ~birthⅢ~
始めに私は、ローリィ社長の家に行った。
一週間お世話になった訳なのだが、まずは孫娘だというマリアに会った。
彼女の部屋に通されたのだが、私は彼女の部屋にある幾つかののろいグッズよりも、
壁に貼られた特大ポスターに目がいった。
「このヒトはだぁれ?」
「!!あぁ、アメリカからみえたから、わからないのね。蓮様よ!!」
「レンサマ?」
「敦賀 蓮という俳優さんなのですの!
とぉ~~~~~ってもかっこよくて優しいんですのよぉ~~~!!!」
「カッコイイ、ヤサシイ………」
それは、私の知っていたクオンが、黒髪で黒い瞳で、薄ら笑っていたポスターだった………。
『ツルガ レン』と言うのが、日本での名前のようね………。
「カレのエンギ、ミテミタイナ………」
「まぁ!そうなんですの?!いっぱい録画してありますから、何を観せましょうか?」
マリアが自分のDVDをあさっている間、私はずっとポスターを見つめていた。
………あまり昔とは変わっていないようなのに、人気俳優だなんて・・・・・・・
日本の芸能界はレベルが低いのかしら?
「これにしましょう♪」
………彼女が観せてくれたのは、『ダークムーン』というタイトルのドラマだった……………
そこに映っていたのは、私の知らないヒトだった。
一回りも二回りも大きく成長し、昔の面影すら見当たらなかった。
カレは、私の知っているクオンではないことが、よくわかった。
カレが成長したのか、私が成長していないだけなのか………。
人は傷つき、傷つけられ、大きくなっていくこともあるから、カレも大人になったのだろうか……?
観ていて私は、うずうずしてきた。
やはり、演技は楽しそうだ。
でも…………、この世界にはもう入る勇気がない。
もう、自分を無くしたくないから……………
私は、ドラマを観ながら、ある人が気になっていた。
とても人を惹きつける、魅力ある演技。
・・・・・・・・・彼女と話をしてみたかった。
何を見、何を感じ、何を思って、あの役をつかんだのだろう。
彼女を観ていたら、少しだけ昔の自分を思い出した・・・・・・・・
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それからの一週間は、毎日マリアと一緒に居た。
彼女はよく、『ツルガ レン』のことと、彼女がお姉様と慕う
『キョーコ』という女の子の話をしてくれた。
彼女が、あの気になっていた女の子だとは知らずに・・・・・・・
そして、彼女が学校へ行っている間、日本の今流行っている音楽の
CDをいっぱい用意してもらって、ずっと聞いていた。
私には、どれもこれも同じように聞こえてきた。
・・・・・・心に響かない、遠い世界・・・・・・・・
これが最初の感想だった。
まずは、日本語の勉強になるからと、辞書を片手に調べ
歌もそのまま真似て歌っていた。
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期限一週間の最後の日、私は曲作りを開始した。
ローリィ社長の前で歌う、日本語の、日本でこれから歌手として、
自分を表現するための曲。
曲作りを始めたときに、思い浮かんだのは、カレだった。
私の知らない、昔の面影もない、カレは、遠い夜空に光る一番星のようだった。
⇒vo.4
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