(しばらく過去の日記を更新します。)6月は仁左衛門さんのいがみの権太が見たかったので、夜の部だけ3階席で観ようと思っていたのですが、先月ご招待席のチケットをいただいたので、本日初日の昼の部は前もって予定しておりました。しかし、傾城反魂香のお徳の役は猿之助さんの定評のある役処のひとつであることと、歌舞伎役者としては新人扱いの中車さんが浮世又平役を演じるので、猿之助さんの代役となる壱太郎さんがどうサポートするかにかかっている演目になってきそうだな、と思っておりました。

 

席は1階の端っこのほうはちょっと空いておりましたが、他はほぼ埋まっていた印象です。土佐修理の助を團子くんが演じるということで、注目が集まっていたようです。壱太郎さんのお徳役は何度か拝見したことがあるのですが、昔浅草歌舞伎で、巳之助さんの又平で観たのが既にすごくよかった。

 

 

中車さんは4月位まで少し憔悴した表情で舞台に出られておられたのですが、今は何があっても自分がしっかりしないと、と息を吹き返した感じで、澤瀉屋のためにはよかったです。演技はまだ歌舞伎っぽくはないけれどももともと器用な方なので、安心して観られます。それよりも、團子くんはしばらく見ないうちに益々背が伸びて、顔立ちが少し端正になっていたのと、立ち居振る舞いが落ち着いて、すっかり歌舞伎役者らしくなっていて、先日の代役の経験も大きく生きたことかと思われます。

 

ただ、ご心労からか頬がこけて、表情に陰りが見えて、個人的には今後が心配になりますが、そこに惹かれる女性ファンは実際増えたかもしれません。興行のためにはある程度は仕方がないことなのかもしれませんが、松竹は役者の悲劇や炎上、スキャンダルさえもそのまま、集客のネタにしてしまう側面があるから、今後あまり酷使されないといいのですが。。

 

観た感じとしてはやはり壱太郎さんが全身全霊で周囲を引っ張っていたので、中車さんもすごく力を出せた感じがします。時期が時期なので、夫婦が世を儚んで死を考えるところなどはあまりに鮮烈で、時が止まって、お話の世界と現実世界がひとつに溶け合ったような感覚があって、観客は物音立てず、固唾を飲んで見守っておりましたが、その後思いがけない展開に導かれ、たのしい大団円を迎えて終了。大津絵のキャラクターが飛び出すシーンでは澤瀉屋の笑也さんや猿弥さんの姿も見られて、少し安心しました。芝翫さんと孝太郎さん、松緑さんが出演されている児雷也も二頭身のカエルの妖怪みたいなものが出てきて面白かったです^^。皆さん、最終日まで体調を整えてなんとか乗り切っていただきたいと願っております。