伊勢音頭はちょっと前に、1回だけ梅玉さんの福岡貢で拝見したことがあったのですが、最後の大詰の部分だけ抜粋されたものだったので、刀を偽物にすり替えられたという勘違いと、遊女お紺に愛想尽かしをされたという誤解が重なり、ショックと、酔いと、刀の鋭さと、悪いタイミングが一致してしまって、突然陰惨な殺戮シーンに発展してしまうクライマックスしか観たことがなかったので、通しで観て、改めて、というか初めて青江下坂という名刀と折紙(鑑定書)が本当に大事なテーマだったのだな、と、今更ながら実感しました。

 

幸四郎さん、迫力のあるいい芸を見せてくれてびっくりしました、(最近すごく生き生きしておられていいですね)。その他の菊之助さん、愛之助さん、彦三郎さん、雀右衛門さんその他の皆さんも適材適所というか、いい俳優陣がそろっていて、一見の価値ありの大満足な演目だったかも。特に歌昇さんの奴林平が秀逸で、若い俳優さんの中でも、吉右衛門さんが可愛がっておられただけあって、実力がある上に凄い出力で場を引っ張ります。この方のおかげで刀の奪い合いシーンがとても面白く観られました^^。それと、松緑さんの喜撰もよかった。というか、松緑さんがリラックスした表情で、とぼけた味を出していて、この方もここ数年、調子が良さそうで安心。(講談とのご縁もよかった。)

 

 

それと、一番びっくりしたのは、今度時蔵になる梅枝さんの芸妓姿と佇まいが、これまで観たことがない位、物凄く綺麗でした^^。梅枝さんは、どちらかというと面長で寂しげなお顔立ちな印象だったのですが、今回、鬘も大柄な家紋を入れた紫の素敵な着物も、梅枝さんの瘦せ型な体型にぴったりで美しかったのですが(萬田久子さん系な感じで)、それだけでなく、これまでにない覇気が劇場中に広がり、これだけの空気の変わるレベルの大きなエネルギーを出せる人は、若い方ではなかなかいないかも。もう、中身は時蔵になられていらっしゃるのでしょう。今後要チェックの方かな、と思いました。