30代半ばにして、津軽三味線を習い始めた。
もともと津軽三味線を聴く事が好きで、20代の頃に一度習いたいと思っていた。
しかし、当時は和楽器に対しては「敷居が高い」イメージがあり、どこで教えてもらえるのか見当もつかず、諦めてしまった。
30代半ばに入り、自分の記憶力や指先を動かす能力を鑑みた時「今が津軽三味線を習い始める最後のチャンスかもしれない」と思い、ついに純邦楽の世界へ足を踏み入れることとなった。
津軽三味線は民謡の三味線とは違い、棹が太くて胴も一回り大きく、少し重い。
そして、それを構えるバランスが非常に難しい。
三味線の棹を左に斜めに立たせ、三味線の胴を、右のあばら骨と右太ももの外側と右肘の三点で支える。
そして、棹から手を離しても倒れないバランスで構えなければならないのだが、慣れるまではこのバランスが非常に難しい。
そして、撥の持ち方も難しい。
ただ持ち手を握るのではなく、少し変則的な手の形を作って、そこに撥をはめるように持つ。
この撥の持ち方をマスターするまでに、私は右手の小指にタコができてしまった。
始めのお稽古の日、先生に「どんな曲が弾きたいですか?」と聞かれ「すぐには無理だとわかっていますが、津軽じょんがら節が弾けるようになりたいです」と答えた。
すると先生は「そう来ると思いました」と言い、"津軽じょんがら変奏曲"という譜面を出してくれた。
「これは、津軽じょんがら節を優しい技法に変えて作った練習曲です」
先生の言葉を聞きながら譜面を眺めたが、五線譜じゃないのでさっぱりわからない。
「これは三味線を横にしている状態を譜面にしたものです。一番上が3の糸、二番目が2の糸、一番下が1の糸です」
その「津軽じょんがら変奏曲」を、今現在、猛練習中である。