小児科の先生からの説明が始まりました。
長男は、産前にわかっていた心疾患の他、肺静脈に問題があり、血液循環がうまくいかない為、肺の状態が悪化していることがわかりました。
心臓だけならとりあえず対処できている状態でしたが、肺静脈の流れと肺の状態が非常に悪い。
小児循環器の先生に詳しくみてもらっている最中とのこと。
小児循環器の先生からも説明があるのでもう少し待ってほしいと言われ、
各種同意書にサインをしました。
私はこの時、
ことの重大性に気づいていなかったのか、
先生から説明を受けても、
助かるに決まっていると思いこんでいました。
私達夫婦の子供として生まれてきたこと、
出産前に心疾患に気づいていただけ万全の準備をしてもらっていること、
日本国内でもトップレベルの大学病院で産前から診断をうけ、
これ以上ない恵まれた幸せな環境で生まれてくるのだから、
助からないわけがないと思っていました。
医師からの説明の後、NICUで長男に2度目の対面をしました。
たくさんの管につながれた長男を初めて目にして胸が張り裂けそうでした。
こんなに小さな身体に、たくさん繋がれたチューブや点滴・・・
「頑張っているね」
「よく生まれてきてくれたね」
「生まれてきてくれてありがとう」
主人と一緒に言葉をかけながら長男の手を握りました。
小さい手、
かわいい足、
生きようと頑張ってくれているんだね。
手術がうまくいけばおうちに帰れるからそれまで一緒にがんばろうね。
長男をもう一度抱き締めたかったけれど、
検査が待っているので手短にNICUから退室して病室のベットに戻りました。
病室に戻ってしばらくすると私の実両親が面会に来てくれて、
「おめでとう」と言ってくれました。
NICUに案内(モニター越しに面会できます)することもできたのですが、
たくさんのチューブにつながれた状態の長男を見せるのは実両親にとって刺激が強すぎるのではないかと心配して、この日はわかっている範囲内での状況を説明し、生まれたときに分娩室で撮ったビデオを見せました。
大きな産声をあげてうまれてきてくれた長男、
「これだけ元気なら大丈夫だね」と笑って会話をしていました。
両親の嬉しそうな顔をみて、私も安心していました。
「検査結果が出たらまた連絡するね」
「落ち着いたらまた会いに来てね」
そう言って、両親は病院を後にしました。
その後・・・
小児循環器の先生から呼び出しがあり、主人と一緒にNICUへ向かいました。
看護師さんの表情からして良い話ではないことは気づいていました。
一体何があったんだろう・・・
胸がざわざわしていました。
小児循環器の先生からの説明が始まりました。
心臓は薬で対処できている状態だが、肺と肺静脈の状態が非常に悪い。
肺気胸をおこし酸素飽和度が下がっている、
小児科の先生からきいていた内容のくりかえしにはなりますが、
非常に危険な状態であることがわかりました。
先生から提示された選択肢は2つでした。
①このまま何もしない
このまま何もしなければ、最後まで一緒にすごすことができるが、助からない可能性は100%。
早ければ3時間、長くても1日の命。
②造影CT検査を受け、手術ができる可能性を探る
今の危険な状態で造影CT検査を受けることは長男にとって負担の大きいことであり、検査から(生きたまま)戻れない可能性もあるが、手術方法がみつかる可能性もある。
すぐに①②のうち1つを選択しなければいけませんでしたが、
この状況で「なにもしない」という選択肢はない・・・
私と主人の意思で②を選び、造影CT検査を受けることにしました。
慌ただしく検査の準備が始まる中、NICUで長男と3度目の対面をしました。
「戻ってきてね」
「きっと手術方法が見つかるよ」
「一緒に頑張ろうね」
小さな体で頑張っている長男を目の前に涙をこらえることができませんでした。
これが最後になるわけがない、絶対に助かる、そう信じていました。
造影CT検査は30分ほどで終わり、再度医師から呼び出しがありました。
長男は無事検査から戻ってきてくれました。
しかし・・・
検査の結果、肺静脈の問題と、肺の状態が悪すぎて手術ができない(手術したところで助かる可能性が極めて低い)ことがわかりました。
心疾患だけなら時期をみて手術ができたのですが、肺静脈と肺の状態がここまで悪かっただなんて・・・
②を選んだのに・・・
結果として①の「何もしない」ことになってしまいました。
助からない可能性100%
残り3時間の命・・・
そんな・・・嘘だよね?
すぐに理解できずに思考がストップしてしまいました。
先生や看護師さんから
「会わせたい方がいれば呼んでください」
そう言われ、帰宅したばかりの両親や、自宅にいた義両親に連絡をしました。
妊娠中に、長男の予後は肺の状態に大きく左右されると聞いていましたが、胎児のうちは私の胎盤をとおして酸素を送っているので問題なく成長できました。
肺は生まれるまで使われない臓器なので、エコーでの診断は難しく、生まれてみないと正確なことはいえないと言われていました。
お腹にいたころエコーで肺静脈だと主治医が思っていた血管は、違う血管であり、肺静脈の異常は出生後初めて判明したことでした。
それでも、助かると信じていました。
この子は助かる為に、生きるために私のところにきてくれたんだから。
なのに、生まれたその日に余命宣告されるだなんて・・・・
想像もしていませんでした。
元気な産声は、なによりのプレゼントでした。
長男くん、生まれてきてくれてありがとう。