ミシュラン二ツ星を獲得しているフレンチレストラン『ESqUISSE(エスキス)』のシェフ・パティシエ成田一世氏からチョコレートのお話を伺える貴重なお話を伺える機会に恵まれました。
 
 
場所は銀座の東急プラザ4階にある『ESqUISSE CINq(エスキスサンク)』
成田シェフの美しいアシェットデセールが食べられるお店です。
『ESqUISSE』のアシェットデセールは、『ESqUISSE』、『ARGILE』、そして『ESqUISSE CINq』
の3店舗でのみ食べられます。ケーキやパンはテイクアウトのみ。エスキスには敷居が高いわ
という方は『ESqUISSE CINq』で、ケーキやパンを購入するのもいいですね。
 
 
スタイリッシュな店内で使われているものは、すべて緻密に計算されていて、お皿も特注。
しゃんと食事中に美しく見えるような設計にしていたり、黒いカトラリーは
女性の手が美しくみえるようなものを使っているというこだわりようです。
 
 
店内にある大きなカウンターで成田イズムを拝聴してまいりました。
はじめは一流パティシィエの前でみなさん緊張(`・ω・´)シャキーン
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成田シェフは、パプア・ニューギニアにあるマヌス島のカカオを使っています。
カカオは、フォラステロ種(FORASTERO)、クリオロ種(CRIOLLO)、トリニタリオ種
(TRINITARIO)の3種がありますが、成田シェフは、フォラステロ種とクリオロ種を
交配したハイブリッド種のトリニタリオ種を使用しています。マヌス島を選んだのは、
その発酵方法に鍵があります。
バナナの原産種のあるマヌス島では、ピュアな自然環境が生み出すバナナ原生種
の酵母でカカオを発酵させます。そう、チョコレートは発酵で出来た産物なんです。
マヌス島へは、飛行機やヘリ、手漕ぎのボートを漕いでやっと辿り着ける秘境の地。
環境汚染もない、ピュアな土地にバナナやカカオが生息しています。
成田シェフは自らマヌス島へ赴き、カカオや発酵を見て取り入れたそうです。
マヌス島のカカオはスモーキーという話もありますが、匂いの原因である土壌の問題をも
解決し、スモーキー臭が付かずに生産されたカカオを使ってチョコレートにしているそうです。
 
 
成田シェフのチョコレートは全て手作り。
カカオをお湯で茹でて丁寧に殻をむいていきます。
この作業を来る日も来る日も繰り返し、チョコレートを作り上げています。
 
 
成田シェフがこだわるポイントにこの小さな胚芽の部分があります。
胚芽が入ると、青臭い香りが残ってしまうようで美味しくないんだそうです。
こんな小さな芯をひとつひとつ、取り除いていく。この気の遠くなるような作業を繰り返し、
手間暇をかけてパーフェクトなチョコレート作りを目指しているとのことです。
たぶん・・・いや確実に、大量生産ではできない技だと思います。
 
 
殻を剥いて焙煎したのがこちら。さらに小さくなってしまいました・・・。
ここからチョコレートを作っていくわけですから
美味しいチョコレートにある程度の価格が付くのは十分納得です。
 
 
成田シェフがこだわるのは発酵。
お話の中で納豆のお話が何度か出てきたのですが、日本の食文化を作り上げてきた
大きな要素に発酵があります。日本人は、味噌、醤油、など様々な発酵食品を生活に
取り込んできました。人間の味覚はどうやら経験を重ねるにしたがって、違った食文化を
持った人たちの味覚が類似してくるということもあり、日本人の舌にもチョコレートの味は親和性がある。だから発酵食品のチョコレートをもっと知ってほしいという熱意を感じました。
 
 
また、シェフは幼少期は体が弱く、入退院を繰り返していたそうです。塩分は1日8g。
最低限の味付けで調理病院食を食べていたおかげで、繊細な味覚が育ちました。
「子どもの味覚は3歳までに決まる」。と言われていますが、今考えればそれが功を奏したと
おっしゃっていました。シェフは、母親が「甘いものは食べてはいけません」と、子供に言うの
をよく聞きますが、それは好きではないと言います。子どもの味覚形成は母乳から始まって
いるので、子供でも安心して食べられるチョコレートづくりを目指しているというお話もされていました。はじめは強面の成田シェフ。実はとても温かい心の持ち主だったようです。
 
色々なお話を伺った後はお待ちかねの試食タイムです。
 
 
オランジェット 山椒 8本入 ¥1500 / 15本入 ¥2500
はじめはカカオニブのさくっとした食感と香ばしい香りを感じます。
甘味はさほど強くありませんが、滑らかな舌触りを感じます。
あわせているのは青い皮のオレンジピールの芳香と和歌山の希少なぶどう山椒。
どれもバランスが良くいくらでも食べられてしまいそうです。
 
 
成田シェフは口どけを味蕾のレベルで考えています。
粒子の大きなチョコレートは味蕾に入り込まず、上を転がっていくので滑らかと感じていく。
私はこのチョコレートを食べた時に滑らかな舌触りを感じましたが、この口どけを作るために
粒子の調整もしているんです。そもそも味は舌だけでなく鼻も十分機能します。
シェフのクリエーションは、味覚、臭覚、おそらく聴覚や視覚、すべてを使って
その味を感じ取れるチョコレート作りをされているようです。
 
 
今回のバレンタインデーのラインナップはこちらの4種。
 
 
 
ボンボンショコラ バルション BALUCHION ¥2000
キャラメル・サレ/フランボワーズ/マヌス/ココナッツ
これまで好評だったものをセレクトしたとのことです。
マヌスを試食させていただきましたが、チョコレートの味をダイレクトに感じました。
 
 
ショコラ カレ奥田 OKUDA ¥1500
柿柚子/抹茶/胡麻ビター/麹
奥田氏が小十に続き出店したお店「銀座奥田」とコラボレーションした和素材ショコラ。
柿柚子を試食しましたが、甘さではなく柿の香り、そして柚子の香り。
しそてチョコレートの味のするショコラでした。
成田シェフは、味は香りも含めて感じるものと言っていましたが、
まさに舌や鼻で美味しさを感じる美味しさでした。
 
 
 
ショコラカレ C.C.C. ¥1500
乳清ミルク/胡麻ミルク/乳清ビター/オイゲノール
サロン・デュ・ショコラのチョコレートの品評会「Club des Croqueurs de Chocolat
(クラブ・デ・クロクール・ドゥ・ショコラ)」通称CCCに出展した成田氏渾身のチョコレート。
 
 
ショコラ カレ エスキス ESqUISSE ¥1500
リナロール/ミュスカディーヌ/オイゲノール/ラムバニラ
オイゲノール等、複雑な香りがショコラにかぐわしさをもたらします。
 
 
 
『ESqUISSE CINq(エスキスサンク)』では、今までの味をさらに進化させSauvage(野性的)
なショコラに挑戦しています。今までのチョコレートの味を進化させ、日本人の舌、
嗜好に合致するチョコレートを発酵食品という共通項から紐解き、発酵が生み出す
チーズのようなまろやかなショコラを作りあげました。新たな素材とのマリアージュも
また楽しい。現在、『ESqUISSE』の発酵への挑戦はチーズまで広がっています。
今回成田ワールドのつくりだす、素晴らしい発酵の世界を感じた時間でした。
 
 
エスキスサンクのショコラコレクションは、
GINZA バレンタイン アベニュー 松屋銀座8階イベントスクエアにて
2月14日(AM10:00~PM8:00)まで販売しています。
 
上記でご紹介したショコラ以外に、
ローズ・ドゥ・サーブルやショコラ・オゥ・アマンドゥなど松屋限定もありますよ。
 
 
 
ESqUISSE CINq(エスキスサンク)
東京都中央区銀座5-2-1 東急プラザ銀座 4F
03-5537-7477