順番が来て、名前を呼ばれ、1人で診察室に入るよう言われました。

医師は女性で優しそうでした。

突然食べれなくなり、眠れなくなった事を伝えると、

家族構成から聞かれました。

友人との関係や失恋した事、
誘導されるように答えていきました。

一体自分はどうしてしまったのか不安で堪らず、

医師の答えを待ちました。

30分程話して、医師の診断結果は

「思春期特有の一過性の鬱病」

でした。

睡眠薬と安定剤を出すと言われ、
今後は思春期外来で来てと言われました。

診察室を出ると兄がソワソワしながら待っていて、

診断結果を言うと、

「頑張ったな、もうゆっくり休もう」

と頭をぽんと叩きました。

私は原因がわかってホッとしたと同時に、
恐怖に襲われました。

「鬱病」

父と同じ病気になった。

私は父のような人間になるのか?

それだけは嫌だ。

と新たな苦しみが生まれました。

でも、薬を飲むしか今の苦しみから解放されないと思い、
「一過性」
という言葉を信じ治療を始めました。

睡眠薬で久しぶりに眠り、
食欲が戻るまで少し時間はかかったけど、
少しずつ食べる努力をしました。

父のようになりたくない。

その一心でした。

父には兄から伝えたようですが、
特に何も言ってきませんでした。

父が私に話しかけたのは春休みが終わる頃でした。

父はなんだかご機嫌でお酒を飲みながら、
私が通りかかると、

「お前もお父さんと同じだな」

と満面の笑みで言いました。

父にとっては、
自分も鬱病だけど今は落ち着いているから安心しろ
という意味だったのだと思います。

でもその一言で私も兄も固まりました。

私にとってその一言は、

まるで「死刑宣告」のようでした。