昨日(5月26日)は2人が最早記録を達成した。一人は、178試合目で通算100セーブを達成した広島カープの栗林良吏投手(27)である。これはソフトバンクの馬原孝浩と並ぶ記録。もう一人は、初土俵から7場所目で優勝した小結・大の里(23)。これは先場所初土俵から10場所目で優勝した尊富士を抜く最早記録である。



大の里は優勝最早記録だけでなく、入幕後の成績が 11-4、11-4、12-3 と三場所連続二桁勝利というのも凄い。今場所は小結で12勝したのだから大関狙いの起点になり、冬場所での大関昇進に期待が掛かる。不安材料は、それまでに大銀杏を結えるようになるか(大銀杏を結えない大関も新記録?)。

相撲内容も12勝3敗の数字以上のものがあった。基本は突いて前に出る押し相撲だが(下の写真左)、右差し・左おっつけで前に出る四つ相撲も取れる(下の写真右)。組んだとき前に出る圧力は押し相撲並であり、また土俵際で相手に腰を寄せて体の大きさを利用するのも上手い。それにより、押し相撲にありがちな不安定さもカバーしている。加えて、若いのに堂々した様もよかった。それでも未だ相撲は完成されてはいない。立ち合いで腰を割ることや相手にマワシを取らせない工夫など、今後の伸び代も十分ある。



ということで、大の里一色の夏場所だった。それというのも、上位力士の休場が余りにも多かったからである。力士の怪我は、必ずしもスポーツ医学の知識のないままに伝統的根性を言う親方任せにせず、怪我防止の観点からの稽古のあり方、食事、制度(公傷休場の再検討)など相撲協会として取り組むべき課題になっている。ショック療法的成果主義として、怪我人が多かったり、怪我であるにも拘わらず無理に力士を出場させた部屋持ち親方は、一定の公式に基づいて算出した額を給料から差し引いてはどうか。

個別力士について言えば、私は場所前に「夏場所の見所」と題したブログで以下の幕内力士5人に注目すると書いた(末尾のURL)。



▪5人のうちの大の里は上記の通りだが、場所前に私が一番期待した琴櫻は11勝4敗。勝ち星は第2位だが、これではとても準優勝とは言えず、横綱昇進への足掛かりにはなり得ない。少なくとも13勝はして欲しかった。腰の重さや体の柔軟性によって土俵際で残して逆転する相撲ではなく、右を差して左上手もしくは左おっつけで攻める相撲、たとえ相手に攻められても自分の形に持ち込む相撲を取って貰いたいもの。今場所を優・良・可・不可で評価すれば「可」だ。

▪一番情けなかったのが霧島。琴櫻の前に立ちはだかって横綱昇進競争などと期待したが、7日目から休場を余儀なくされ、来場所は大関から陥落する。彼も怪我の故だが、来場所までに完治したなら10勝して大関にカムバックして貰いたいが、首の怪我だから完治は難しいかも(そうなれば横綱昇進は厳しい?)。

▪熱海富士は7勝8敗と負け越しはしたが、着実に力を付けている。押し相撲の王鵬は6勝9敗で全然駄目だった。もっと気迫を前面に出して相手を突き飛ばすような相撲を取るのが先決。将来を考えれば、相手を起こし、どちらかを差し、もう一方の腕でおっつける四ツ相撲も覚えるといいのだが....。

ということで、夏場所を一言で表現すれば、「大の里が終始リードし、頼みの綱の大関・琴櫻も最後は息が切れ横綱・大関の面目ゼロの場所」だった。恐らく「来場所も大の里が引っ張り、大関他が(今の状況では横綱・照ノ富士の名前は出し難い)どれだけ付いて行くかの場所」になるのではないだろうか。

横綱・照ノ富士と大関・貴景勝に黄信号が点滅している状況で、今年後半から来年にかけて注目するのは、と言うより強く期待するのは "琴櫻の横綱昇進" と "大の里の大関昇進" だ。相撲界の危機とも言える現状を救えるのは、この二人しかいないように思える。大関が期待される若元春、大栄翔、朝乃山は何だかモタモタしている。来年くらいには熱海富士が追い付くのではないか。

十両は流石に関脇経験者の若隆景が期待通り14勝1敗の好成績で優勝。来場所は再入幕もあり得る。もう一人の期待力士・伯桜鵬は5勝6敗4休に終わった。武漢コロナに感染し途中休場したのだが、昨年左肩を手術して2場所連続休場して今年の初場所に幕下復帰、続く春場所で十両に復帰したものの、今場所2日目に右腕を痛めてテーピングをして出場を続けていた。こういう "怪我と無理の繰り返し" では将来がどうかと私は危惧している。

以上、夏場所が終わっての感想である。


夏場所の見所|
https://ameblo.jp/sakugi-no-hito/entry-12851781974.html