スーパーチューズデーの結果、米共和党のニッキー・ヘイリー(元サウスカロライナ州知事・元米国連大使)は同党の大統領候補選から撤退すると表明。



これで十中八九、大統領本選は共和党トランプ(77)vs 民主党バイデン(82)の戦いになる。言い換えれば、"自国愛と言うよりも自己愛の塊のトランプ" と "時に記憶が飛び、時に認知症状が現れるバイデン" の争いだ。両者の支持率は拮抗しているのでどちらが勝つか分からないが、どちらが大統領になっても、政策云々の前段階で大きな不安が残る。

その状況で、岸田総理は国賓として4月に訪米してバイデン大統領と会談し、米議会で演説する。岸田総理のバイデン大統領との関係は強化されよう。だが、もしトランプが大統領になったら、トランプは岸田・バイデン関係をどう思うだろうか。決して岸田にはいい感情は持つまい。この逆をやったのは、安倍元総理だ。未だ就任していないが、次の大統領はトランプであることが確認されると時を置かず、トランプにわざわざ会いに行き、トランプとの固い個人関係の礎を造った。そして、それは日本の国益に貢献した。


トランプは好き嫌いの感情が大きく影響するタイプであることを考えると、岸田総理の4月訪米は甚だ政治的に不味いタイミングだ。かと言って、事ここに至って訪米をキャンセルすると、今度は岸田に対するバイデン大統領の感情は悪くなるので、もはやどうしようもない。

なぜそうなったか。一言で言えば、それは岸田総理が米国政治の行方を冷静な目で読むことができなかったからだ。岸田総理の最大関心事は、昨年9月に内閣を改造しても支持率は上がらず、更に統一教会問題や昨年末からのパー券裏金問題などで支持率を下げるという状況で、どう支持率をアップさせ、今年9月の自民党総裁選での再選に繋げるかの一点だ。



支持率回復の手段は、パー券裏金問題を鎮める政治改革、物価高を上回る賃上げの実現、4月の衆議院補欠選挙での勝利に加え、訪米・米議会演説を通じてのイメージアップなどだ。だが、訪米について言えば、上記で述べる通り、米国大統領選の行方が全く分からないタイミングで設定してしまった。言ってみれば "賭け" のタイミングである。逆目が出れば、安倍なき日米関係はギクシャクする。

冷静に考えていればリスキーなタイミングでの訪米は計画しなかった筈だ。冷静な判断ができなかったのは岸田総理本人の問題もあるが、冷静な判断をする材料を総理に上げる参謀が外務省にもどこにもいなかったこともあろう。特に、昨年9月の内閣改造で、それまで側近以上の存在だった木原誠二前官房副長官を週刊誌報道の故に(週刊文春が、木原の妻の元夫が死亡した事案に絡む問題をすっぱ抜いたので)、更迭せざるを得なかったことは大きな痛手だったに違いない。

今年の9月に総裁(&総理)になるのは岸田現総理か、それとも上川現外務大臣、小・石・河、高市経済安保担当大臣のうちの誰かか。誰がなるにしても、世界を俯瞰し、政治の究極の目標たる日本の安全と繁栄について確固たる信条を持つと共に、優秀な参謀を持っていなければ、総理・総裁の仕事はできまい。