元日に能登半島を襲った地震では場所によっては地面が約4メートル隆起し、西方向に1メートルずれたという。昨年11月に発覚したパー券売上のキックバックに端を発した自民党の地殻変動もかなり大きい。いつ頃どう収斂するか分からないが、その地殻変動は "麻生と菅が軸" となっている。この二人は育ちの違いの故か、所謂ケミストリーが合わない。

一見、自民党は無派閥・派閥解散グループ(菅・二階+岸田・安倍・森山)と派閥存続グループ(麻生・茂木)とに二分されてきているように見えるが、そう単純ではないし、派閥を解散しようがすまいが本質的には余り違いはない。なぜなら、派閥を解散しても、議員は一旦一匹狼のようになってもやがて徒党(派閥は政策集団と言い直すだろうが)を組む。現に、無派閥と言いながら、菅グループ、谷垣グループ、石破グループがあるではないか。これらが派閥と異なるのは、①他のグループと掛け持ちしてもよい、 ②金のやりとりをしない、③人事に関与しない、の3点だろう。尤も、③は曖昧になりがち。新しい自民党総裁が就任したとき、「うちの派の◯◯を大臣(副大臣・政務官)にしてくれ」という押し込みはしなくなるとしても、総裁は全議員をよく知っている訳ではないので、総裁が有力者に相談すること十分あり得る。結局、人事に関与・不関与の境界は必ず曖昧になり得る。

派閥解散かどうかではないデバイダーの方が根深い。これまでの経緯・恩義や怨念・育ちの違いなどの理由で合う・合わないのデバイダーである。冒頭にあげた「麻生↔菅」の他に、「岸田↔茂木」「岸田↔二階」「岸田↔菅」のギクシャク関係がある。また、今般岸田が麻生に事前相談なく派閥解散を公言したので、二人の間に亀裂が生じたと言われている。二人は去る21日、ホテル・オークラで夕食を共にして手打ちをしたことになっているが、完全にわだかまりがなくなったのかどうか。

上記のような重鎮同士のギクシャク関係の他に、亀裂や分解が生じている派もある。

● 麻生派と茂木派の内部で亀裂が生じている。麻生派の亀裂は現時点ではさほど大きくはなさそうだが、今後の亀裂は大きくなるかどうか。一方、茂木派の場合は従来からあった潜在的亀裂が顕在化しつつある。茂木は故・青木に嫌われていたので、青木の流れを汲む小渕や参議院茂木派は小渕の下に結集するのではないか。

● 安倍派は分解する。どう落ち着くか分からないが、派閥は解散しても若干名(福田系安倍派)は福田達夫の下に結集する可能性は結構高い。これまで安倍派を支配してきた5人衆(萩生田、西村、松野、高木、世耕)に加え、塩谷や下村は政治責任を取らざるを得まいから、当面力をもがれる。また特捜部は必ずしも未来永劫に捜査をギブアップした訳でもないし、検察が不起訴にしても検察審査会で起訴となる可能性もあろう。なので脛に傷ある議員は暫くはビクビク状態だ。その間、彼ら7人に群がっていた議員がどう漂流するか。

自民党の地殻変動の現状を私は下図のように捉えているが、9月の自民党の総裁選に至るまでに予算の成立(3月末?)、補欠選挙(4月)、国会の閉会(6月)などの日程を睨みながら、自民党の "先生方" は右に左に漂流する。正に右往左往である。




この間に "有事" が発生しないことを祈るばかりである。