台湾総統選は、親日で日米欧路線を行く民進党候補の頼清徳が "何とか" 勝った。国民党政権の最後の総統だった馬英九は、過去「釣魚島(尖閣)の奪回のために、日本とは一戦を交えることも厭わない」「南京大虐殺や尖閣諸島での日本の言動は、大陸・台湾双方の人々の心を逆なでする」などと発言したことがあるが、そういう党に政権が移らないで済んだ。日本としては "やれやれ" である。正式には、5月に総統・頼清徳総統(Lai Ching-te)副総統・蕭美琴(Siau Bi-khim)の体制が発足する。



台湾で同じ党が3期連続で政権担うのは初めてこと。それは目出たいのだが、以下の要因でこれまでより政権運営は難しくなるので、喜んでばかりもいられない。

▪現総統の蔡英文氏は総統選での得票率は過去2回とも50%台後半だったが、頼氏は40.1%なので "弱い総統" の門出となる。

▪同時に行われた立法議員選挙では、民進党は過半数割れして第二党になったので(国民党52議席、民進党51議席、民衆党8議席)、国会では民衆党がキャスティングボートを握る。民進党は民衆党の協力を得たい処だが、民衆党は民進党と国民党のどちらとも固定的には組まず、案件毎に是々非々で行く可能性が高い。

この結果を招いたのは、若者や都市住民などの「浮動票」「中間派」「無党派」などが投票に行かなかったり、民衆党に流れたりしたことと共に、中国共産党が国民党を支援したからと言われる。頼氏が二選を目指すなら、中国に依存しない形で経済成長を実現して、浮動票・中間派・無党派を繋ぎ止めることが必須だ。

今後、中国は間違いなく台湾への圧力を強める。特に、5月の総統就任式までの期間、台湾への挑発をエスカレートさせる。懸念される中国の強硬手段に対しては、日米欧は台湾支援で足並みを揃えなければならない。具体的には尖閣~宮古海峡およびバシー海峡でのQUADの共同軍事演習、尖閣~台湾海峡への米空母巡航、台湾への武器供給、米国軍事顧問団の台湾派遣、台湾のTPP加盟などたくさんある。


安倍元総理が当初は "Security Diamond" と唱えた "QUAD体制" が "FOIP"(自由で開かれたインド太平洋)を真に実現できるかどうか、正念場の戦いがこれから始まる。それに大きな影響を及ぼすのは今年11月の米国大統領選である。端的に言えば、自国のことしか考えない米国になるのか、それとも国際協調を志向する米国になるのかである。