昨日午後3時過ぎに中国が発射した衛星搭載のロケットは台湾本島南部の上空を通過した。台湾国防部は直ちに "国家級警報" を出した。スマフォには以下の画面が現れたとのこと。



私が感心したのは、授業中の生徒・学生たちは警報を聞いて直ちに避難し始めたことである。直ちに避難行動を取ることができるのは訓練しているからであり、"授業中の生徒・学生たち" ということは "一般人も" の筈である。

それもその筈。台湾では中国のミサイル攻撃を想定して、年に一度の防空避難訓練を行うことが法律で定められているのだ。台湾を4地域に分けて一日ずつ行われる。予定の時刻になると空襲警報のサイレンが鳴り、スマフォには警報メッセージが現れる。警報が出てから30分間、屋外にいる全ての人は(外国人も含む)建物の中か地下道に入らなければならない。バスや車両は路肩に停止し、商店も一時的に営業をとり止める。警察官らの誘導に従わない者は罰せられる。

私も1980年前後に台北に出張していたとき、空襲警報の訓練に出くわした。午後3時頃だったと記憶しているが、突然サイレンが鳴り響き、人々は屋内もしくは地下道に入り始める。私は丁度そのとき投宿していたホテルの近くにいたので、急ぎホテルに入った。最初何が起こったのか全く分からなかったが、現地の日本語のできる人が「あれは空襲警報の訓練ですよ」と教えてくれた。ホテルの自室から街を眺めたら、街はシーンと静まり返っていた。やがて軍人が乗った軍用トラックが現れ、高スピードで走り去って行った。

当時の台湾は戒厳令下にあったので(1987年に解除された)、それで空襲警報の訓練をするのだろうと私は一人合点していたが、実際には戒厳令とは無関係に訓練している。寧ろ、中国が武力攻撃する可能性は戒厳令が発布されていた頃よりも今日の方が遥かに高い。

それつけても、我が「Jアラート」の情けなさよ!である。毎回のようにシステムが作動しなかった、自治体職員が扱いに慣れていなかった、国民は何処に避難していいか分からない等などが指摘されている。私の記憶では一度も迅速な避難行動実現した試しがない。ハッキリ言って、今、北朝鮮のミサイルが秋田県に落ちたり、中国軍の宮古島上陸に先駆けてミサイル攻撃して来た場合、かなりの確率で人的被害が出るのではないか。もう安閑としていられない状況になりつつあるのに、これでいいのか!

なので、危険に囲まれている日本も台湾に倣って強制的な防空避難訓練を行うべきだ。それを検討するだけでも、多くの課題が浮かび上がってくる筈だ。訓練には法的強制力が伴わなければならない。さもなくば絶対に徹底しない。また、強制的な訓練を通じて、"のほほんとしている日本人" にも初めて防衛意識が芽生えるだろう。