櫻塚森*徒然草・4(その他の王子2)

櫻塚森*徒然草・4(その他の王子2)

ココは、櫻塚森が書いたお話をUPしています。恋愛小説ですが、らぶらぶな表現が苦手な方、恋愛は、プラトニックに限るという方、お子ちゃまは、回れ右してください。カテゴリーからお進みください。

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「あほな子やねぇ…大人になってから知恵熱?」
ベッドの中、顔だけ外に出している私の頬はカッカしていた。
兄さんの気持ちを聞いてからすぐ、顔が赤くなるほど熱いなって気がしたけど、まさか熱が出るなんて…。
母さんは呆れ顔。
私だって、熱出すと思わないじゃない?
寝返りをうち、昨日1人で妄想したことを思ってはバタバタした。
そりゃね、年頃だもん、色々考えるわけですよ。
兄さんにちゃんと好かれているのかなとか、どうして、恋人みたいに、触れてこないのかな?とか。
色々考えて1人でバタバタして…ちゃんと兄さんに確かめればよかったんだ。
ブルブルと携帯が鳴る。
着信の名前は兄さん。
[葵?]
聞こえる兄さんの声にホッとする。
「兄さん、こんばんは。」
[…葵?]
ん?なんだろ…。
「どうしたの?兄さん…何かあったの?」
向こうから重いため息。
[ま、仕方ないか…。]
兄さんの呟きに首をかしげる。
どうしたんだろ…。
[熱出したって?]
えっ!な、なんで、知ってんの!!
「な、何で?」
[母さん情報…おばさんが言ってたって…。]
か、母さんったら!!
「あ、あう…そ、」
[大丈夫なのか?]
「う、うん、ちょっとだけだから…。」
[傍に居てあげたいけど、ちょっと無理だから…声が聞けてよかった。]
「兄さん…。」
優しい…ホントに兄さんは優しいよ。
[傍に居て、一緒に添い寝したいとか思ってるんだけど?]
「えっ、あ…。」
[風邪だったら、うつすと治るだろ?葵の風邪、俺に渡して欲しいよ。]
私は兄さんの声を耳に聞きながら、どう返事をしていいか悩んでいた。
「で、でも、兄さんが風邪引いたら、会社の人困るでしょ?」
やっとの思いで出た言葉。
それに対して兄さんが笑っている。
[風邪を引いたら、今の忙しい状況から抜け出せるし、葵に看病してもらえるだろ?]
またまた、頬が熱くなって来た。
[俺達は、一緒に居る時間が少なすぎるんだよ、葵。年が離れている上に、こうも会えないんじゃ、俺は不安だよ?]
兄さんが不安になることなんてないんだよ、だって、私はずっと兄さんが好きなんだもん。
そう言いたいのに、言葉にならない。
[葵?]
「えっ…?」
[温かくして寝るんだよ?そっちに帰ったら、会いに行くから、それまでには元気になるんだ。]
「か、風邪じゃないから、大丈夫!!」
向こうで絶句する兄さん。
[えっ?]
「一晩寝たら大丈夫!」
兄さんが噴出した。
[葵?]
「えっ?何?」
[葵は、一体何に興奮したんだい?]
「えっ?」
クスクスと笑っている兄さん。
[葵は、昔から、何か興奮すると熱出してただろ?遠足前とか、受験前とか。]
さすが兄さん…。
[で、何に興奮したの?]
うっ、言えない。
[俺とのHなことでも想像した?]
ぎょっとなって携帯を落しそうになった。
「に、に、兄さんっ!なんてこと言うの!」
軽快な笑い声。
[はははっ、図星か。]
「ち、違うもんっ!」
[…ま、いいか。帰ってきたら、思いっきりそのつもりで居てくれてるって思うから。]
「ちちち違うって言ってるのにぃ!」
兄さんの笑い声は納まらない。
もうっ!切るよ!
[遠慮しないって言っただろ?葵。]
「うっ…。」
そうでした。
たしかに、兄さんはそう言った。
[帰ったら、全部俺のにするから。俺に対して、もっとHな葵にしてあげるね。]
「に、に、兄さんっ!!」
笑い声はまだ続く。
「……からかってるでしょ、兄さんったら…。」
[そうだねぇ…葵が何回も兄さん、兄さんって言うから、仕返しかな?]
あ…そうでした。
「…。」
[葵?…俺の名前呼んで?そしたら、仕事もはやく片付きそう。]
なんか、目が回りそう…。
兄さんの声がヤケに甘く耳に届く。
「…き、桔梗さん…。」
[はい、…じゃあ、頑張って、1日でも早く帰れるように頑張るから、葵も頑張って、熱下げろよ?]
「うん…。」
おやすみという言葉を残して兄さんとの会話は終わった。
結構長い間話をしてたけど、大丈夫だったのかな…。
時計はまだ昼前。
東京の空の下、頑張っている兄さんを思いながら私は瞼を閉じた。


つづく

ふと仕事場に飾っている写真立てに目をやった。

愛する妻・美鶴の写真、遠く海外に住む父母の写真、娘・朔夜の写真。

その朔夜の家族写真。

そして、いずれ自分の後を継ぐ雷紋の写真がそこにあった。

写真の中の彼は、笑っているが、表情がなく、本当に何を考えているのか分からない風に映っていた。

「美鶴も、私も感情表現に対しては豊かなんだがな・・・。」

そう何度思ったかしれない写真。

小さい頃の写真はそれ以上に無表情で、愛想笑いさえなかった。

その写真の隣に2つの写真。

1つは彼が選んだ女性、森住月凪と並んで撮られた写真。

初めて彼女を家に連れてきた時に美鶴が2人をカメラに収めたのだ。

中学の時にあった事件は、開きかけた彼の心を閉ざしてしまっていた。

その鍵である彼女が雷紋のもとにいる。

彼女のお陰で雷紋は、親友を得て、内面的に人間へと成長した。

彼が親友と選んだ男達は実に頼もしい連中で、彩紋は密かに彼らを古賀に入れたいと思うほどであった。

しかし、彼らは損得ナシで雷紋と一緒に居てくれるのだ。

「母が知ったら大変だぞ、雷紋。」

内心楽しんでいる自分が居る。

彼女のお陰で頼もしい男へと成長している息子に構いたくて、悪戯したくてたまらないのだ。

「こそっと教えておこうかな・・・今度ドイツに行くし。」

悪戯小僧のような笑顔を浮かべた彩紋は、ふと一枚の少し古い写真に目をやった。

そこには、自分と肩を並べて微笑む1人の男の写真。

その隣には、その男と美しい女性が自分と美鶴と並んで映っている写真があった。

「総一郎、お前が生きていてくれたら、俺は、孤独を感じる時間も少なくてすんだんだぞ?」

今は亡き友に語る。

「彩紋さま、お時間です。」

秘書の恭介が声をかけてきた。

「うむ、分かった。」

彼の顔付きが変わる。

この瞬間、彼は古賀の総帥として気持ちを切り替えていた。


おわり

篤輝くんのお兄さんは有名な音楽プロデューサー兼アーティストなんだって。
質問を受け付けるといってくれた篤輝くんに気持ちは聞けないまま家族のことなんか聞いてしまった。
「父さんは、いま、何処かなぁ?ヨーロッパを駆け巡ってる営業マン?いや、SEだったかな?」
目の前には、篤輝くんと棗くん。
橘くんのお兄さんは事務所に戻ったみたいで、篤輝くんのお義姉さんは、橘くんのお義姉さんの家にいってしまったの。
そして、目の前のイケメン2人は猫を相手にじゃれあいながら意識は私の方に向いていた。
「篤輝…俺、帰るわ。」
「ん?あぁ…了解。」
えっ、2人きりですか?
しんとなる部屋に子猫の声が聞こえる。
「よしよし。」
篤輝くんの目は何処までも優しくて私を戸惑わせる。
「猫…好きなの?」
会話のないこの空間が耐えられなくて尋ねた。
「うん、好き。どっちか言ったら猫派。ちなみに、棗はどっちが言ったら犬派。」
聞いてもいないことを教えてくれた。
「兄さんが…猫好きでさ…飼われていても自由そうなところがいいって。」
何?何を思い出しているの?
「俺らは、自由じゃなかったからね…。」
じっと見てくる篤輝くん…。
大きな黒い目、長い睫。
「兄さんと、あ~ちゃん…義姉さんがいなかったら、かなえにも会えなかった。」
彼の手が伸びてきて、そっと引き寄せられた。
「あ…篤輝くん?」
綺麗な大きな黒い目が私を捉えている。
「かなえは、俺が守るから…。」
「えっ…?」
な、何?
何で…篤輝くんの顔が近付いてきてるの?
えっ!
キ、キスしちゃうの!?
「あっくん!!」
突然の声にビクッとなって彼の体が離れた。
部屋に飛び込んできたのは、とても可愛らしい女の子で、ふわふわの髪をしたその子は、篤輝くんに抱きついた。
「あき…ひっ!」
その勢いに押されて篤輝くんは後に倒れる。
うっ、可愛い子に睨まれてしまった。
「…いたたたっ、よいしょっ!」
篤輝くんは彼女を抱えながら身体を起こす。
「あき?何飛び込んでんの?危ないだろ?」
「おかあしゃまに聞いたの、あっくんが来てるって。」
彼女の顔は可愛い女の子なんだけど、すでに女だなって思った。
「あっくん、あきひのいる時来てくれない。」
篤輝くんが少し困ったような笑顔を見せていた。
「えー?そーかなぁ…。」
その子は徐に私の方を向くと、さっきよりもキツイ目で睨んできた。
「誰?なんで、私の家にいるの?」
「ごめん、かなえ。こいつ姪っ子の…。」
「ちがうもん!あきひ、あっくんのお嫁さんになるんだもっ!」
ぎゅっと掴んでいる彼女の小さい手がとても羨ましいとか思っちゃったりして。
「んーでもね、俺、決めちゃったんだよね。お嫁さん。」
「あきひじゃないの?」
2人が何かを喋っていた。けど…なんだか、もういいかな?
さて、そろそろ、おいとましようかな…。
立ち上がろうとした私の手を篤輝くんがつかんだ。
「この子。俺のお嫁さん。だから、暁姫は、諦めて?」
えっ?
ニコニコしている篤輝くん。
大きな瞳をたちまちウルウルさせている女の子が泣き出した。
部屋中に響く泣き声に違う部屋から暁さんが入って来た。
「あらあら…。」
「うわ~ん!!おかあしゃまぁ!!」
あきひちゃんは、泣きながら暁さんのところへと歩いて行く。
「ははっ、ごめんなさいねぇ…はいはい、だから言ったのにねぇ…ごめんなさいね、あっくん、かなえちゃん。お邪魔しましたぁ…。どうぞ…つづきを。」
パタンと扉が締まった。
しんとしちゃっている部屋。
「ごめんね、かなえ。」
「えっ?」
ニコニコと笑っている篤輝くん。
「かなえのお陰で、暁姫が諦めてくれそうだよ。」
立ち上がって私も立たせる篤輝くん。
「帰ろうか。送っていくね。」
えっ、えっ?
「か、帰るの?」
「うん、帰りたくないの?泊ってく?」
ドキッとするようなことを言う。
「か、帰る…。」
「そっ?」
また手を繋がれて、泣いている女の子を抱いた暁さんの横を通り過ぎていく。
「じゃあ、あ~ちゃん、フォローよろしく。」
そういって、玄関を出ると、黒髪に青い瞳をしたお人形さんのような男の子がいた。
「よっ、空音。」
「あっくん、あきひいた?」
「うん、いるよ。空音、暁姫泣いてるから、笑わしたって?」
「あっくん、あきひ泣かせたの?」
じっと睨んでるその顔も可愛い子だわ…。
「んーそかも。だから、空音、よろしくね。」
「しゃーないなぁ…。」
男の子は、ため息を吐いて、部屋へと入っていった。
「い、今のは?」
「兄さんの親友の子。暁姫の幼馴染で、あの子にベタ惚れなんだよね~。本人無意識だけど。」
「へぇ…。」
それより聞きたいことが…。
「そうそう、暁姫がね、禁断の恋に嵌る前に、俺のコト諦めさせたかったんだ。」
「だ、だから、私を呼んだの?」
「えっ?…あぁ…そうかな?」
そうなんだ…そうか…じゃないとお姉さんとかに会わせたりしないか。
暗くなった街を歩く。
「いい。」
「えっ?」
「ココでいい…後は、一人で帰る。」
その手を振りほどく。
「かなえ?」
「もういい…構ってくれなくていい。大丈夫だから…。」
一歩下がる。
もう少しで家だし…。
まだ、そんなに暗くないし。
私は、駆け出していた。

つづく