「あほな子やねぇ…大人になってから知恵熱?」
ベッドの中、顔だけ外に出している私の頬はカッカしていた。
兄さんの気持ちを聞いてからすぐ、顔が赤くなるほど熱いなって気がしたけど、まさか熱が出るなんて…。
母さんは呆れ顔。
私だって、熱出すと思わないじゃない?
寝返りをうち、昨日1人で妄想したことを思ってはバタバタした。
そりゃね、年頃だもん、色々考えるわけですよ。
兄さんにちゃんと好かれているのかなとか、どうして、恋人みたいに、触れてこないのかな?とか。
色々考えて1人でバタバタして…ちゃんと兄さんに確かめればよかったんだ。
ブルブルと携帯が鳴る。
着信の名前は兄さん。
[葵?]
聞こえる兄さんの声にホッとする。
「兄さん、こんばんは。」
[…葵?]
ん?なんだろ…。
「どうしたの?兄さん…何かあったの?」
向こうから重いため息。
[ま、仕方ないか…。]
兄さんの呟きに首をかしげる。
どうしたんだろ…。
[熱出したって?]
えっ!な、なんで、知ってんの!!
「な、何で?」
[母さん情報…おばさんが言ってたって…。]
か、母さんったら!!
「あ、あう…そ、」
[大丈夫なのか?]
「う、うん、ちょっとだけだから…。」
[傍に居てあげたいけど、ちょっと無理だから…声が聞けてよかった。]
「兄さん…。」
優しい…ホントに兄さんは優しいよ。
[傍に居て、一緒に添い寝したいとか思ってるんだけど?]
「えっ、あ…。」
[風邪だったら、うつすと治るだろ?葵の風邪、俺に渡して欲しいよ。]
私は兄さんの声を耳に聞きながら、どう返事をしていいか悩んでいた。
「で、でも、兄さんが風邪引いたら、会社の人困るでしょ?」
やっとの思いで出た言葉。
それに対して兄さんが笑っている。
[風邪を引いたら、今の忙しい状況から抜け出せるし、葵に看病してもらえるだろ?]
またまた、頬が熱くなって来た。
[俺達は、一緒に居る時間が少なすぎるんだよ、葵。年が離れている上に、こうも会えないんじゃ、俺は不安だよ?]
兄さんが不安になることなんてないんだよ、だって、私はずっと兄さんが好きなんだもん。
そう言いたいのに、言葉にならない。
[葵?]
「えっ…?」
[温かくして寝るんだよ?そっちに帰ったら、会いに行くから、それまでには元気になるんだ。]
「か、風邪じゃないから、大丈夫!!」
向こうで絶句する兄さん。
[えっ?]
「一晩寝たら大丈夫!」
兄さんが噴出した。
[葵?]
「えっ?何?」
[葵は、一体何に興奮したんだい?]
「えっ?」
クスクスと笑っている兄さん。
[葵は、昔から、何か興奮すると熱出してただろ?遠足前とか、受験前とか。]
さすが兄さん…。
[で、何に興奮したの?]
うっ、言えない。
[俺とのHなことでも想像した?]
ぎょっとなって携帯を落しそうになった。
「に、に、兄さんっ!なんてこと言うの!」
軽快な笑い声。
[はははっ、図星か。]
「ち、違うもんっ!」
[…ま、いいか。帰ってきたら、思いっきりそのつもりで居てくれてるって思うから。]
「ちちち違うって言ってるのにぃ!」
兄さんの笑い声は納まらない。
もうっ!切るよ!
[遠慮しないって言っただろ?葵。]
「うっ…。」
そうでした。
たしかに、兄さんはそう言った。
[帰ったら、全部俺のにするから。俺に対して、もっとHな葵にしてあげるね。]
「に、に、兄さんっ!!」
笑い声はまだ続く。
「……からかってるでしょ、兄さんったら…。」
[そうだねぇ…葵が何回も兄さん、兄さんって言うから、仕返しかな?]
あ…そうでした。
「…。」
[葵?…俺の名前呼んで?そしたら、仕事もはやく片付きそう。]
なんか、目が回りそう…。
兄さんの声がヤケに甘く耳に届く。
「…き、桔梗さん…。」
[はい、…じゃあ、頑張って、1日でも早く帰れるように頑張るから、葵も頑張って、熱下げろよ?]
「うん…。」
おやすみという言葉を残して兄さんとの会話は終わった。
結構長い間話をしてたけど、大丈夫だったのかな…。
時計はまだ昼前。
東京の空の下、頑張っている兄さんを思いながら私は瞼を閉じた。
つづく
