俺達の検査日はあっという間にやって来た
せっかくだからと、一日がかりで色んな検査をしてもらう事になっている
翔さんもそうしたって言ってたっけ…
なんて考えてたらドアチャイムが鳴って
ドアを開けると、翔さんがニコニコして立ってた
なんかそれだけで安心してしまう
一緒に…って言われた時は微妙に思えたのに不思議だ
病院までは歩いて行ける距離だから、道中は二人で演奏の事や、曲の解釈の事で盛り上がって
そのまま楽しい気分で検査は始まった
大きな病院だから、当然、翔さんとは別々になって
一人で淡々と受けるのは「何かある」と疑いを持ってる俺には、思ってた以上にキツかった
翔さんが一緒に来てくれた事は、結果的には良かった訳だ
夕方になって最後の診察を受けて終了となり、ようやく翔さんと合流出来た
「おっ!お疲れ!」
「ふふ、翔さんもね」
「思ったより一緒じゃなかったなぁ…」
不満げに言って頬を膨らます翔さんに思わず吹き出すと、益々膨れるから
「まあ、仕方無いよ
大きい病院だから、幾つもの部屋で何人もの人が同時進行で検査して行くんだし」
なんて言ったけど、自分も心細かったなんて言えなくて
頬膨らませた翔さんを見て和んだりしてる
そう言えば「年上」なんて言ってたけど、これじゃまるで子供みたいだよ
こうなった翔さんは中々機嫌が直らない
俺は最終手段とばかりに
「今日は貝料理にしようと思ったけど…
やめてコンビニで弁当でも買って帰ろうかな?」
耳打ちすると翔さんは丸い目を輝かせて
「貝!?
潤が作ってくれるの?
食べたい!!」
…って…本当に子供だよ…
でも、既に鼻歌交じりになってる翔さんを愛おしいと感じてしまう俺も俺だと思う
帰りにスーパーに寄って
貝の他に野菜とかも買って、俺のマンションへと向かう
翔さんの中ではもう、病院への不満は無いようで
これだけ分かり易いのも凄いと思う
でも、そんな所は翔さんの良い所かな?
感情が読めないよりはずっと…ね?
夕食は思ってた通り、凄い勢いで無くなっていった
翔さんの頬袋はずっとパンパンで
本当、作り甲斐がある
そんな食事も終えて
ソファーで翔さんの肩を抱いてマッタリしてる中、俺は口を開いた
「ねえ、翔さん…
俺を…抱いて?」
翔さんの目が大きく見開かれた