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翔さんの声を聞いた気がした後
俺はずっと夢を見てた
翔さんと元通りになって
暖かな愛情に包まれ、幸せに暮らしてる…
だけど最後には、必ず翔さんは消えてしまうんだ
どんなに大声で呼んでも見つからなくて
結局真っ暗になって、俺は突っ伏して涙する
そんな夢…
何度繰り返されたか分からないけど、ようやく抜け出すことが出来て
少し体を動かしてみると、右手だけ重い事に気付く
不思議に思ってそちらを見ると、誰かが俺の手を握ったまま伏せてて
寝てる…?
起こすのもなんだし、俺はそっと元の位置に体を戻した
それにしても、この温もり…
覚えがある
「翔…さん…?」
口をついて出たのは愛しい人の名前
すると、ピクッと反応があって
伏せられていた頭がゆっくりと起き上がる
少し疲れて見えたその顔は、紛れもなく愛しい人…
「翔さん!?
何で…」
大きな声を出したつもりだったのに、掠れたその声でも翔さんの丸い目は更に大きく見開かれて
「潤…潤!
大丈夫か?
い、今、医者を呼ぶから!」
そう言って立ち上がると、俺の枕元に転がってるナースコールに手を伸ばそうとするからそっと止めると、翔さんは首を傾げた
「少しでいい…
二人きりでいさせてよ」
そう言うと翔さんは目を泳がせながら、イスにストンと腰を下ろして
「ゴメン、潤…
俺はお前に愛される資格なんて無いんだ
ゴメン…だから…」
消え入りそうな声に、今度は俺が首を傾げて
「だからって以前(まえ)みたいに消えるなんて許さないよ?」