そして、いよいよ噂の社長の話…
僕は以前、太宰府の都府楼前駅のすぐそばにあるM病院で働いていまして、
その時に事務課長をしていたのが現施設の社長なんです。
そして10数年経った後に、縁があって施設に入社の運びとなったのですが。
その施設で働き始めて数か月した頃に、こんな話を聞きました。
「以前、働いていたM病院を辞めて、しばらくは施設の利用者の受診には必ずM病院
を利用していたが、ある日を境に出入り禁止になったと。その理由が『横領』を
していたのが発覚したからだ」と。
その時は話半分として聞いていました。いずれもその社長を嫌っているスタッフの
話だったからです。(当時から半分くらいの社員に嫌われていたようだが、自分にとっては
恩人だと思っていたってのもありましたので…)
それから2年近く経ち、、、
ある利用者さんが末期癌と診断され余命2か月と診断されました。
その利用者さんは施設開設当初から入所していたこともあり、スタッフ全員が献身的に
見守っていました。末期癌の発覚直前まではほぼ自立し、認知もほとんど無く、他の
利用者さんの助けをしたりと、中心的な存在でもありました。
でも、癌が全身に転移したことが分かってからは…
日に日に弱っていき、自分で立つこともできなくなっていき…
そしていよいよ話すのもツラそうに…。
そんな時、
…亡くなる2日前のことですが、自分が夜勤になった時の話。
夜中の2時頃にナースコールが鳴り、「トイレかな?」と思いつつその方の居室へ
伺いました。
最初はやはり言葉も聞き取りずらく。
でもよくよく聞くとトイレとのことでしたので誘導し介助しました。
そしてトイレが終わると、その方がポツリポツリと話し始めたのです。
最初は「あなたに出会えて、本当によかった。ありがとう」という事を繰り返し言われました。
僕も「僕の方こそあなたと出会えて感謝してます」(本心で思ってました)と伝え続けました。
同じ様なやり取りをしばし続けた後に、衝撃的な事を言われます。
「あなたのためを思って言うけど、社長だけには気をつけなさいよ」と。
一瞬、聞き間違ったかと思い、話す姿がツラそうにも関わらず、聞き返してしまいました。
「何でですか?」
「あの社長は本当に汚い男よ。前に行ってたM病院があってね、受診の時はいつも
その病院に行ってたんだけどね、ある日からパタっと行かなくなったの。あの人は
事務をしとったでしょうが。その時にね、お金をくすねてたとよ。それでね、それがバレてね
『二度とウチには来ないでくれ』って言われてね、行けなくなったの。」と。そして
「それでね、額が額だったから、あまりにも大きいからね病院も。大事にできないでしょうが?
もと従業員がそんな事してたってね。だからお金はちゃんと返せば公にはしないから、
その代わり二度と出入りしないように、って言われてね、それで私たちも行けなくなったの」
「本当にお金に汚い男だからね、本当に用心しなさいよ。でもね、他の人の前では
良い顔しときなさい。あの男はそういうのにすぐに感づくからね。」
この言葉を2度3度、繰り返し言われました。今にも消え入りそうなか細い声で。
その時の感情は本当に複雑なものでした。やはり事実だったのかと呆れたのと
この状態の人にこんな事を言わせるのかという憤りと、様々な感情が入り乱れました。
こんな状態の人に、こんな事を言わせたらいかんって!
その場はその方の体調を考慮し話を切り上げてもらいましたが、20分程訴え続けられたその
衝撃は胸に深く刺さりました。そしてその方が自分が明けの翌日に無くなったことにより
「命わ賭してまで伝えたかったこと」として深く刻まれることとなりました。
これを裁くという話ではなく、問題は「こういう人間が施設を経営している」と
いうことです。
今現在、介護がブラック化しているのは、こういった人間でもいともたやすく施設経営に
手を伸ばすことができるということが現実にある。ということではないでしょうか。
そして、こんな人間が作る組織もそれ相応のものになっていく、ということ。
これも例として実際にあった事ですが。
ある時、、、あの熊本大震災の時。僕はちょうど夜勤でした。本震の前日ですが
震度5以上が夜勤中に4回も来て、その度に利用者さん全員の無事を確認し、その間に
汚染もあったりと、いつもと比べてその日はかなりバタバタし、朝を迎えました。
8時を過ぎて、日勤の方が来て、みな口々に「昨日は大変だったね。電話も繋がらなく
なってたね」「大丈夫だった?」という事を次々と言われ、そこで初めて電話が繋がり
にくかったことにも気づいたのですが。(本来ならば、地震があった時に社長に連絡
すべきだったかもしれません。が、普段社長が深夜に電話にほとんど出ない為に
習慣づいてなかったのもありますが、ケガ等も全く無かったので自分の判断として、
電話しませんでした。)
そして、主任のケアマネも出勤し、自分のもとへツカツカと歩いてき、
(この人は日頃からスタッフに冷酷であるため、優しい言葉は元から期待しては
いませんでしたが)、そこで発した一言目が、
鬼のような形相で「昨日、電話繋がらんかったよ!!!」と
怒鳴られたのです。