「………ブッサイクだなぁ…」
ある程度の覚悟はしていた。インカメラで自分を見た時も思った。
それでも新たに並んだカメラロールの中の自分は予想以上の自分で、我ながら感心するほどだ。
「二人ともアウトだね」
俺だけが門外不出の出来なのに、自分も含めて言うのが雅紀の優しいところ。
「オレね、これ好きだよ」
そう言って画面を指した先にある一枚は、最後に撮った穏やかな笑顔を見せる二人の姿。
決してアイドル然とした笑顔ではない。でも、完全に素でもない。
思うことは色々ある。そこには怒りや諦めはなく、前を向くことを決めたここから先への秘めた想いが見える笑顔。
これを見て好きだと笑う雅紀が好きだ。
「俺も好き」
顔を傾けながら、雅紀の頬を人差し指でつつく。
一瞬きょとんとした後、すぐに照れくさそうに笑って同じように顔を傾けてきて、もう何度目か分からないキスをした。
今日だけで何度思っただろう。
幸せだと。
雅紀に触れるたびに生きていてよかったと心が震えるのは、それが俺の偽らざる思いだから。
これまでの感染者が明暗を分けたどこにその違いが生まれたのか、明確な答えは分からない。
みんながみんな最悪な結末を迎えるとは限らないし、そもそも感染すること自体がまるでロシアンルーレットみたいな状況。
だけど俺は今、ここにいる。
少なくともそこには何らかの意味があるはずだと思うし、気づきや学びもあった。
泣いても笑っても一度きりの人生に、無駄な時間なんて一瞬だってない。
こんなことがなけりゃ、こんな風に改めて思うことだってなかなかなかっただろう。
日々何事もなく無事に過ごせていたことに感謝する日が来るなんて、過去の自分に教えてやったらどう思うだろうな。
やりたい事がやれない不満を抱えたってしょうがない。その中で最大限の出来る事を見つけよう。
少なくとも、突然道が断たれた時に後悔することが一つでもなくなるように。
「雅紀」
重ねていた唇を離し、愛しさをこめて愛する人の名前を呼ぶ。
ゆっくり瞼を上げる雅紀を正面から見つめ、まっすぐ目を見る。
「雅紀」
いつになく真剣な様子に雅紀の喉がコクンと小さく鳴る。
「愛してる」
伝えないと絶対に後悔する言葉。
今まではいつでも言えるから今じゃなくてもなんて思っていたけど、伝えられなくなってから後悔したって取り返しがつかないから。
「雅紀が好きだ。雅紀が大好き。雅紀を誰よりも何よりも愛してる」
「しょーちゃ…」
驚いたように見開いた両方の目からぶわわっと大きな涙の粒が零れ、次々と頬を滑り落ちていく。
「オレもすきぃ。オレもしょーちゃんが大大大好きだし、いっちばん愛してるかんね。誰にもあげないオレだけのしょーちゃんなんだかんねっ!」
泣きながらギュッと首に腕を回して抱きつかれて、一度は離れた体がもう一度ぴったりとくっついた。
ほら。幸せだ。これで俺の後悔が一つ減った。