二人して泣き疲れて、疲れ果ててまたベッドに横になり、虚ろな眼差しで俺はずっと雅紀の髪をさらさらと梳き、雅紀もまた生気を欠いた目で横向きに抱きついていた。

 


「…なあ、雅紀」
 

「…ん」
 

 

つまんだ指先から滑るように髪が零れていく。


はらりと落ちたそれは雅紀のこめかみに降る。
 

 

 

時間は有限。
 

 

今在るものが永遠に在るとは限らないことを自分たちは知っている。
 

 

5人で仕事をすることはしばらくなくなるけど、別に全く会えなくなる訳じゃない。
 

プライベートで連絡を取り合うことだってあるだろう。
 

でも、5人が揃って仕事をするのは、あと僅か。
 

 

 

12月31日、際の際まで『嵐』でいようと言ったのは確かニノ。
 

 

 

「5人でいような…」
 

「うん…」
 

 

肩を抱いて頭ごと引き寄せて髪に口付ければ、そっと目を閉じ答える。
 

 

 

 

その瞬間まで、誰一人も欠けさせない。
 

 

誰にも、何にも邪魔なんてさせないから。
 

 

 

そう決意した俺の胸の奥に点った青い炎が静かに揺らめいた。
 

 

 

雅紀の肩に置いていた手を腰に滑らせると指先に硬いものが当たった。
 

 

「?」
 

 

雅紀の体を離すと着ていた服のポケットのところにその形があった。
 

 

「あ、ケータイ入れてた。ごめん、痛かった?」
 

「いや、大丈夫だけどなんでそんなところに入れてた?」
 

「さっきね、しょーちゃんの寝てるところ写真撮ってたから」
 

 

雅紀は体を起こして、笑いながらポケットからごそごそとスマホを取り出して操作した画面をこちらに向ける。
 

 

「オレのしょーちゃんコレクション」
 

 

得意げに言う雅紀の手の中で無防備に眠る俺。
 

カメラロールに何枚もある自分の寝姿が見えた。
 

 

「ぶっ。何枚撮ってんだよ」
 

 

目覚める時に聞こえた馴染みのある音の正体を知る。
 

カメラのシャッター音だったのか。
 

雅紀に向かって無言で手を差し出せば、素直に掌にスマホを乗せてくれる。
 

 

「だって貴重なヒゲのあるしょーちゃんだから撮っとかなきゃ勿体ないじゃん」
 

 

勿体ないねえ…。
 

だとしてもこんなに撮るかね。
 

全部目ぇ瞑ってるのに、意味ある?
 

 

「なぁ、全部寝てるやつだけどそれでいいの?」
 

「え…」
 

「一緒に撮ろうよ」
 

 

たぶん二人とも泣き腫らして目とかすごいんだろうけど。
 

俺なんてひげもあるし、寝起きで浮腫んでて、アイドルからは程遠い顔してると思うけど。
 

それでも、これだって今しかない貴重な瞬間だろ。
 

 

「おいで」
 

「……うん」
 

 

隣に移動してきた雅紀と何枚も写真を撮った。