スタッフさんが苦しそうな呻き声をあげて、力まかせに櫻井くんの手を解こうとしてるのが見えた。


 

この前あの人に捕まった時に、オレなんかじゃ全く歯が立たなかったことが甦る。


 

このままじゃ櫻井くんの手が。
 

 

「や、やめて櫻井くん!!」
 

 

立ち上がって二人の元へ急ぐ。
 

 

「オレっ、大丈夫だからっ。何もなかったからっ、だから櫻井くん、この手緩めて?」
 

「相葉・・・」
 

 

櫻井くんの手は真っ白く、少し冷たくなってた。
 

ゆっくり解いた手はオレの手の中で血色を取り戻し、小刻みに震えていた。

 

手に多少ひっかき傷が出来てるけど、それ以外に目立った大きな怪我はなさそうで安心する。
 

 

「大丈夫ですか?」
 

次に、苦しそうに何度も咳き込むスタッフさんの隣にしゃがんで背中をさする。
 

なかなか治まらないので心配していたら急に肘を掴まれて、びっくりして顔を上げた。
 

 

「行くぞ」
 

「え・・・、でも、この人まだ・・・」
 

「みんなを待たせてるんだぞ。早く戻らねぇと迷惑だろ」
 

 

やっぱり怖い顔をした櫻井くんにそう言われてハッとする。
 

そうだ、オレ、着替えてみんなのところに戻らなきゃいけなかったんだ。
 

 

「あ・・・、そ、そっか。そうだよね。ごめんなさい」
 

 

スタッフさんも心配だけどみんなに迷惑をかけてしまってることに責任を感じ、焦って急いで立ち上がろうとしたら肘を掴んだまま櫻井くんが走り出すので、動きにくくてフラフラしながらついてった。
 

 

船室を出て走ってる途中で自分が衣装を持ってないことに気づいた。
 

 

「なに?」
 

「あ・・・オレ、着替え向こうに置いてきちゃった」
 

 

振り返ったことに気づいた櫻井くんが声をかけたのでそう答え、引き返そうとした。
 

そしたら、あからさまにムッとした櫻井くんはオレの肘を掴んでた手を緩めるどころか、更に力強く肘じゃなく手を握り直した。
 

 

「!!!」
 

 

怒りモードMAXな背中からは逃がさないという強い意志を感じ、一瞬でオレの手は手汗でびちょびちょになった。
 

 

それでも櫻井くんは絶対にオレの手を放さなかった。